
江東区で民泊・旅館業はできる?2026年7月の常駐義務化と土日限定の民泊新法を整理
江東区では2026年7月1日に旅館業の改正条例が施行され、簡易宿所の運営体制の要件が変わりました。それまで認められていた「徒歩10分以内に駆けつけられる体制+キーボックス」の運営はできなくなり、営業中は従業員の常駐が求められます。
民泊新法(住宅宿泊事業)のほうも、区の上乗せ条例で営業できるのは土日に限られます。無人で運営しながら平日の需要も取る、という組み立ては、江東区ではどちらの制度でも難しくなりました。
江東区は国家戦略特区民泊の実施区域ではないので、選べるのは旅館業(簡易宿所)と民泊新法の2つです。以下、改正で何が変わったか、申請前の標識と説明会をどう進めるか、民泊新法で何日営業できるかの順に整理します。
本記事の規制情報は、当社が保健所への確認と区の公開資料をもとに整理したものです(2026年7月時点)。
江東区の民泊・旅館業規制 早見表
| 区分 | 項目 | 内容 |
|---|---|---|
| 旅館業(簡易宿所) | フロント(玄関帳場) | なし |
| 駆けつけ要件 | 常駐(2026年7月から) | |
| 近隣への周知 | 説明会 | |
| 鍵の受け渡し | 直接対面 | |
| 民泊新法(住宅宿泊事業) | 区の上乗せ条例 | 土日のみ営業可 |
2026年7月の条例改正で変わったこと
改正条例案は2026年(令和8年)3月に区議会へ提出され、同年7月1日に施行されました。保健所に確認したところ、7月1日より前は、徒歩10分以内に駆けつけられる体制を取り、鍵はキーボックスで受け渡す運用が認められていたとのことです。施行後は、この駆けつけ型の運営では許可の要件を満たしません。
| 項目 | 2026年6月まで | 2026年7月1日以降 |
|---|---|---|
| 運営体制 | 徒歩10分以内の駆けつけ | 従業員の常駐 |
| 鍵の受け渡し | キーボックス可 | 宿泊者と直接対面 |
フロントの設置自体は求められていません。ただ、常駐者が鍵を手渡しして宿泊者を確認する以上、その待機場所と受け渡しの場所は施設のどこかに要ります。客室に使える面積が減り、常駐者の人件費が毎月の固定費に加わる点は、フロント必須の区と大きくは変わりません。
すでに許可を受けている施設に経過措置があるかどうかは、本記事の調査では確認できていません。既存の簡易宿所を買う、あるいは運営を引き継ぐ場合は、常駐の要件がその施設に適用されるかを保健所に確認してください。
旅館業(簡易宿所)の申請前にやること:標識と説明会
旅館業は許可制で、年間の営業日数に上限はありません。江東区では近隣への周知として説明会の開催が求められ、その前に施設の敷地へ標識を立てる必要があります。区の資料で示されている標識の要件は次のとおりです。
- 大きさ:縦・横それぞれ60cm以上
- 設置の高さ:地面から標識の下端まで、おおむね1m
- 掲示期間:営業許可申請日の15日前から、営業許可が出る日まで
- 説明会との関係:説明会の開催日の5日前までに標識を設置し、関係住民に開催通知の文書を配る
- 標識設置届:設置後7日以内に提出。案内図、標識の設置位置図、標識ごとの遠景・近景の写真を添える
- 変更届:標識の内容を変えたときは変更届を出す
これを日程に並べると、標識の設置と開催通知の配布を起点に、5日以上あけて説明会、設置から15日以上たってから許可申請、という順になります。標識は許可が出るまで掲示し続けるので、設置場所は道路から見えて、工事や搬入の邪魔にならない位置を選んでおくと手戻りがありません。
説明会では、騒音・ごみ・緊急時の連絡先など、運営で住民が気にする点を聞かれることになります。答え方を事前に文書にまとめておくと、当日の説明がぶれません。
民泊新法(住宅宿泊事業)は土日のみ
民泊新法は届出制で、全国一律で年間180日が上限です。江東区は区の上乗せ条例で、営業できる日を土日に限っています。1年を52週として数えると、営業できるのは約104日で、全国上限の6割に届きません。
家主が住んでいない物件で営業する家主不在型は、住宅宿泊管理業者への管理の委託が必要です。営業日が少ない分、委託費や家賃などの固定費を1泊あたりで割ると重くなります。
| 制度 | 営業できる日 | 年間の目安 | 運営の前提 |
|---|---|---|---|
| 旅館業(簡易宿所) | 毎日 | 365日 | 常駐・鍵は対面で手渡し |
| 民泊新法 | 土日のみ | 約104日(52週×2日) | 家主不在型は管理業者へ委託 |
平日に当たる祝日や年末年始が営業日に含まれるかは、条例の文言だけでは読み取れません。収支は土日だけで試算し、対象となる区域や「土日」の数え方は届出前に区の担当課で確認してください。
江東区の物件相場(2026年8月)
| 指標 | 江東区 | 23区での順位 |
|---|---|---|
| 売出中の戸建 価格(中央値) | 8,230万円(67件・延床87㎡) | 高い方から11位/21区 |
| 賃貸戸建 募集賃料(中央値) | 月16万円(43件・51㎡) | 高い方から19位/21区 |
| 一棟収益物件 表面利回り(中央値) | 4.7%(79件) | 高い方から13位/23区 |
出典:Urbalytics マーケットレポート(江東区)。2026年8月に売出・募集されていた物件の中央値です。件数が10件に満たない指標は表示していません。
江東区の賃貸戸建の募集賃料は23区で低いほうに入り、募集されている物件の面積も小さめです。借りて民泊にする転貸型なら家賃という固定費は抑えやすい反面、グループ客をまとめて泊められる広さの戸建は探しにくくなります。売出中の戸建の価格は23区の中ほどで、買って一棟貸しにする場合の取得コストは都心の区ほど重くありません。
一棟収益物件の表面利回りも23区の中位です。普通の賃貸で回した場合と比べて宿泊事業に上乗せの収益が出るかがポイントですが、旅館業は常駐の人件費、民泊新法は土日だけという営業日数が、それぞれ収益を削ります。
どちらの制度で組み立てるか
客室を複数取れる一棟物件なら、旅館業で常駐体制を組み、人件費を客室数で割るほうが収支を合わせやすくなります。戸建1棟を丸ごと貸す規模では常駐の人件費を吸収しにくく、民泊新法で週末の需要に絞る形が候補になります。
旅館業を選ぶ場合は用途地域の確認が先です。旅館・ホテルは住居専用地域(第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、田園住居地域)と工業地域・工業専用地域には原則として建てられず、第一種住居地域では3,000㎡以下に限られます。住宅を転用する場合は用途変更の検討と、建築基準法・消防法への適合も必要です。
江東区で物件を検討するときのチェックポイント
- 既存の簡易宿所を取得・承継するなら、2026年7月以降の常駐要件が適用されるかを保健所に確認する
- 常駐者の待機場所と、鍵を手渡しする場所を間取りの中で確保できるかを図面で見る
- 縦横60cm以上の標識を、下端がおおむね1mの高さで、許可が出るまで掲示できる場所があるか
- 標識設置から申請まで15日以上、説明会まで5日以上かかる前提で、引き渡しから営業開始までの日程を組む
- 民泊新法で考えるなら、土日だけの約104日で管理委託料と家賃を回収できるかを試算する
- 区分マンションは管理規約、賃貸物件は貸主の転貸承諾と用途の承諾を書面で確認する
常駐と対面での鍵渡しが前提になったことで、江東区の簡易宿所は運営を誰が担うかで収支が大きく変わるようになりました。常駐スタッフの手配を含めた運営体制は、民泊運営代行のページで紹介しています。
よくある質問
江東区でキーボックスを使った無人の簡易宿所はできますか?
2026年7月1日の改正条例施行後は、常駐と宿泊者への直接の鍵渡しが求められるため、キーボックスによる無人運営はできません。施行前は徒歩10分以内の駆けつけとキーボックスでの運用が認められていました。
7月より前に許可を受けた施設も常駐が必要ですか?
既存施設の扱い(経過措置の有無)は本記事の調査では確認できていません。対象施設の許可番号や許可日を添えて、保健所に直接確認してください。
江東区の民泊新法で平日に営業できますか?
当社の整理では、区の上乗せ条例により営業できるのは土日に限られます。平日も営業したい場合は、常駐体制を組んだうえで旅館業(簡易宿所)の許可を取る方法を検討することになります。
問い合わせ先・参考資料
- 参考資料:江東区の公開資料
ほかの区と比較する
条例・運用は改正や保健所の判断で変わることがあります。物件の取得や申請の前に、管轄の保健所へ事前相談してください。
アイキャッチ写真:MaedaAkihiko / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0、トリミング)
MARKET DATA
江東区の不動産相場
2026年8月時点、江東区の戸建の売出価格の中央値は8,230万円(データ67件)で、東京都全体(5,499万円)の約1.5倍です。一棟収益物件の期待利回りの中央値は4.70%(売出価格の中央値2億1,800万円、データ79件)で、東京都全体(5.03%)より0.33ポイント低い水準です。
出典:Urbalytics マーケットレポート(江東区)。売出情報(掲載中の物件)の月次中央値で、成約価格ではありません。期待利回りは年間想定賃料 ÷ 売出価格(表面利回り)です。
この記事について
- 執筆
- TLL編集部
- 運営
- TLL合同会社宅地建物取引業 東京都知事(1)第108202号住宅宿泊管理業 国土交通大臣(01)第F03424号
記事中のデータは出典と集計時点を明記しています。相場や制度は変わることがあるため、個別の判断は最新情報と専門家へのご相談のうえで行ってください。











