中央区で民泊・旅館業はできる?フロントの動線設計と土日限定の民泊ルールを整理
中央区で宿泊事業を始める場合、最初の関門は建物の設計です。旅館業(簡易宿所)では従業員の常駐と対面での鍵渡しに加えて、フロントをどこに置き、宿泊者がどう客室まで上がるかという動線まで保健所が確認します。
民泊新法(住宅宿泊事業)のほうも、営業できるのは原則として土曜日の正午から月曜日の正午までの宿泊です。平日に営業できないため、年間180日の上限に届くずっと手前で、区のルールによって日数が決まります。
中央区は国家戦略特区民泊の実施区域ではないので、検討するのはこの2つの制度です。保健所に対面で確認した内容も含めて、物件選びと図面づくりの段階で見ておくべき点を整理します。
本記事の規制情報は、当社が保健所への確認と区の公開資料をもとに整理したものです(2026年8月時点)。
中央区の民泊・旅館業規制 早見表
| 区分 | 項目 | 内容 |
|---|---|---|
| 旅館業(簡易宿所) | フロント(玄関帳場) | あり(令和8年4月からフロントは必ずゲストの通路で設置) |
| 駆けつけ要件 | 常駐 | |
| 近隣への周知 | 説明会 | |
| 鍵の受け渡し | 直接対面 | |
| 民泊新法(住宅宿泊事業) | 区の上乗せ条例 | 営業可能日数: 原則として、土曜日の正午から月曜日の正午までの宿泊に制限されています。 |
旅館業(簡易宿所):フロントの位置と宿泊者の動線が問われる
旅館業は許可制で、営業日数の上限はありません。中央区ではフロント(玄関帳場)の設置と従業員の常駐が求められ、鍵は宿泊者に対面で渡します。キーボックスを使った無人チェックインは想定されていません。
中央区では、フロントを置くだけでなく、宿泊者が通る場所に置くことまで求められます。早見表のとおり、令和8年(2026年)4月からはフロントを宿泊者の通路上に設けることとされています。保健所に対面で確認した際に説明を受けた内容は次のとおりです。
- 宿泊者はフロントを通ってから客室に上がる動線にする
- エレベーターはフロント階に停止させ、扉が開くと正面にフロントが見える配置にする
- フロントは3㎡以上とし、フロント階に宿泊者用の男女別トイレを設ける
- 営業施設と住宅などそれ以外の用途が、建物の中で混在しないようにする。住宅部分とエレベーターを共用する計画は認められにくい
中低層の一棟ビルを転用する場合、低層階にフロントとトイレをまとめ、エレベーターの停止階を制御する工事が必要になることがあります。上の階を住宅として残し、下の階だけを簡易宿所にするような部分転用は「混在させない」という条件に当たりやすいので、計画の初期に図面を持って保健所へ相談してください。
近隣への周知は説明会で行います。保健所からは、説明会の前に町会長へ挨拶しておくよう案内がありました。
宿泊定員で決まるトイレと洗面所の数
共同で使うトイレと洗面所の数は、宿泊定員に応じて決まります。保健所から示された目安を定員別に並べると、次のようになります。
| 宿泊定員 | トイレ | 共同洗面所の給水栓 |
|---|---|---|
| 5人まで | 2個 | 1個 |
| 10人まで | 3個 | 2個 |
| 15人まで | 4個 | 3個 |
給水栓は5人につき1個が基準です。定員を増やすほど共用部の設備が増え、客室に使える面積は減ります。フロントの3㎡とフロント階の男女別トイレも含めて、床面積をどう割り振るかを先に決めておくと、収支の試算がぶれにくくなります。
民泊新法:営業できるのは土曜正午から月曜正午まで
民泊新法は届出制で、全国共通の上限は年間180日です。中央区は区の条例で営業期間を絞っており、原則として土曜日の正午から月曜日の正午までの宿泊に限られます。1週間で受けられるのは、土曜泊と日曜泊の2泊です。
金曜泊が入らないため、週末の旅行需要のうち金曜から2泊する予約は取りこぼします。祝日や年末年始の扱いを含め、例外があるかどうかは届出前に区の担当課で確認してください。家主不在型で運営する場合は、住宅宿泊管理業者への管理委託も必要です。
| 制度 | 1週間に営業できる日 | 年間の上限(目安) |
|---|---|---|
| 旅館業(簡易宿所) | 毎日 | 365日 |
| 民泊新法(全国の上限) | 区の制限がない場合 | 180日 |
| 民泊新法(中央区の原則) | 土曜泊・日曜泊 | 約104日(52週×2泊) |
104泊がすべて埋まることはまず考えにくく、民泊新法で中央区の物件を回すなら、宿泊売上は年に数十泊分で見ておくことになります。平日は住宅として使う、あるいは自己利用と組み合わせるといった前提がないと、投資としては成り立たせにくい制度設計です。
中央区の物件相場(2026年8月)
| 指標 | 中央区 | 23区での順位 |
|---|---|---|
| 売出中の戸建 価格(中央値) | データ不足(7件) | — |
| 賃貸戸建 募集賃料(中央値) | データ不足(4件) | — |
| 一棟収益物件 表面利回り(中央値) | 2.5%(20件) | 高い方から23位/23区 |
出典:Urbalytics マーケットレポート(中央区)。2026年8月に売出・募集されていた物件の中央値です。件数が10件に満たない指標は表示していません。
中央区は、売出中の戸建も賃貸戸建も件数が少なく、表ではどちらもデータ不足としています。戸建を買って一棟貸しにする、戸建を借りて転貸する、という民泊の定番の形は、物件そのものがほとんど出てこないところから始まります。
流通の中心は一棟収益物件ですが、表面利回りは23区で最も低い水準です。普通賃貸では利回りが出にくいぶん宿泊事業に目が向きやすいものの、中央区ではフロントやトイレの工事費と常駐の人件費が上乗せされます。購入価格にこの2つを足したうえで、賃貸で運用した場合と比べてください。
中央区で物件を探すときのチェックポイント
- 用途地域を都市計画図で確認する。旅館・ホテルは住居専用地域や工業・工業専用地域では建てられず、第一種住居地域では3,000㎡以下に限られる
- 建物に住宅や事務所が入っている場合、宿泊部分と動線・エレベーターを分けられるか
- フロント階に3㎡以上のフロントと男女別トイレを置いても、客室の数を確保できるか
- 住宅から転用するなら用途変更の要否を確認し、建築基準法・消防法への適合工事を見積もる
- 区分マンションは管理規約で宿泊利用が禁止されていないか、賃貸なら貸主の転貸承諾を書面で取れるか
中央区は、小さな区分マンションや戸建で始めるより、フロントと常駐を置いても採算が合う規模の一棟物件で検討する区です。常駐スタッフの手配や清掃を含めた運営体制は、民泊運営代行のページでご案内しています。
よくある質問
中央区の民泊新法で、金曜日の宿泊は受けられますか?
原則として受けられません。中央区の条例では、土曜日の正午から月曜日の正午までの宿泊に限られています。曜日を問わず営業したい場合は、旅館業(簡易宿所)の許可を取ることになります。
既存ビルの一部の階だけを簡易宿所にできますか?
保健所の説明では、営業施設と住宅などが混在しない構成が求められ、住宅部分とエレベーターを共用する形は認められにくいとのことでした。一部の階で計画するなら、宿泊者の動線を住宅側と分けられるかを図面で確かめてから相談してください。
事前相談はどこにすればよいですか?
旅館業の許可は中央区保健所、民泊新法の届出は区の担当課が窓口です。保健所の連絡先は記事の末尾に載せています。住所と図面を用意して相談すると、フロントの位置や設備の過不足を早い段階で指摘してもらえます。
問い合わせ先・参考資料
- 中央区保健所(旅館業担当):0335415938
ほかの区と比較する
条例・運用は改正や保健所の判断で変わることがあります。物件の取得や申請の前に、管轄の保健所へ事前相談してください。
アイキャッチ写真:ayumi kubo / Unsplash
MARKET DATA
中央区の不動産相場
2026年6月時点、中央区の戸建の売出価格の中央値は6,740万円(データ12件・件数が少なく変動しやすい値)で、東京都全体(5,480万円)の約1.2倍です。2026年8月時点の一棟収益物件の期待利回りの中央値は2.54%(売出価格の中央値3億5,800万円、データ20件・件数が少なく変動しやすい値)で、東京都全体(5.03%)より2.48ポイント低い水準です。
出典:Urbalytics マーケットレポート(中央区)。売出情報(掲載中の物件)の月次中央値で、成約価格ではありません。期待利回りは年間想定賃料 ÷ 売出価格(表面利回り)です。
この記事について
- 執筆
- TLL編集部
- 運営
- TLL合同会社宅地建物取引業 東京都知事(1)第108202号住宅宿泊管理業 国土交通大臣(01)第F03424号
記事中のデータは出典と集計時点を明記しています。相場や制度は変わることがあるため、個別の判断は最新情報と専門家へのご相談のうえで行ってください。












