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大田区で民泊・旅館業はできる?特区民泊・民泊新法・簡易宿所の3制度と申請の流れ

江崎 隆信宿泊事業マネージャー

約6分で読めます

大田区は、東京23区で唯一、国家戦略特区民泊(特区民泊)を実施している区です。民泊新法(住宅宿泊事業)と旅館業(簡易宿所)に加えて、宿泊事業の入り口が3つあります。

ただし民泊新法は、区の上乗せ条例で住居専用地域と工業地域等では営業できません。旅館業もこれらの地域には原則として建てられないため、「旅館業が無理な住宅地でも民泊新法なら届出できる」という、他区で使われる選択肢が大田区にはありません。

本記事では民泊新法と簡易宿所の要件、簡易宿所の許可が出るまでの流れを中心に整理します。特区民泊は区が独自に要件を定めているので、最低宿泊日数や対象区域などの詳細は区の担当窓口で確認してください。

本記事の規制情報は、当社が保健所への確認と区の公開資料をもとに整理したものです(2026年8月時点)。

大田区の民泊・旅館業規制 早見表

区分

項目

内容

旅館業(簡易宿所)

フロント(玄関帳場)

一定の代替設備を備えれば玄関帳場なし

駆けつけ要件

徒歩10分以内

近隣への周知

説明会

鍵の受け渡し

キーボックスOK

民泊新法(住宅宿泊事業)

区の上乗せ条例

住居専用地域、工業地域等は不可

3つの制度の違い

民泊新法は届出制で年間180日が上限、旅館業は許可制で日数の上限がありません。特区民泊は区の認定を受けて営業する制度で、民泊新法の180日上限は適用されませんが、その代わりに区が定める要件を満たす必要があります。

制度

手続き

年間の営業日数

住居専用地域・工業地域

民泊新法(住宅宿泊事業)

届出

180日まで

区の条例で営業不可

旅館業(簡易宿所)

許可

上限なし

原則として建てられない

特区民泊

区の認定

180日上限の対象外

区に要確認

特区民泊にも区が定める対象区域があり、住居専用地域や工業地域の物件で使えるかどうかはその定め次第です。物件の住所を示して、区に確認してください。

旅館業(簡易宿所)の要件

大田区の簡易宿所は、フロント(玄関帳場)の設置が不要で、徒歩10分以内に駆けつけられる体制とキーボックスでの鍵の受け渡しが認められています。近隣への周知は説明会の開催です。

このほか、当社の調査時点で、周知や運営体制を見直す次のような内容が示されていました。

項目

見直しの内容

駆けつけの窓口担当者

3名以上

近隣住民への周知の範囲

20mに拡大

説明会

2回以上の開催を義務化

周知用の掲示板

A3版からA2版以上に

ごみの回収

週1回から週3回に

いずれも運営コストに直結します。駆けつけ要員を3名以上そろえるには、自社で対応するにしても外部に委託するにしても、シフトを組める体制が要ります。ごみ回収が週3回になれば、事業系ごみの回収契約の費用も上がります。

最新の運用と、既存施設への適用の有無は保健所で確認してください。

簡易宿所の許可が出るまでの流れ

大田区で簡易宿所を始める場合、保健所への事前相談から営業開始までは次の順で進みます。

  • 保健所に事前相談する

  • 図面をもとに、保健所の事前確認を受ける

  • 建築確認申請(区の建築審査課)と、消防法上の検査の相談(管轄の消防署)を進める

  • 近隣住民へ周知する(説明会の開催)

  • 旅館業の許可を申請する

  • 保健所の実地検査を受ける

  • 保健所長から消防署長へ確認が行われる

  • 許可が出て、営業開始

近隣への周知は許可申請の前に済ませる必要があります。説明会を2回以上開く運用で、1回目の告知から2回目の開催まで日程を取るので、建築・消防の手続きと並行して準備を始めておくと全体の期間を縮められます。

住宅を転用する場合は、建築確認の段階で用途変更の検討と、建築基準法・消防法への適合を確認することになります。工事が必要になると、この段階の期間が最も読みにくくなります。

民泊新法(住宅宿泊事業):営業できない地域がある

大田区の上乗せ条例は、曜日ではなく地域で制限をかけています。住居専用地域と工業地域等では営業できず、それ以外の地域では全国上限の180日の範囲で営業できます。家主不在型は、住宅宿泊管理業者への管理の委託が必要です。

小中学校の敷地から100m以内では、家主不在型の新規届出は月曜正午から金曜正午まで営業できません。一方で、戸建の多い住宅地が住居専用地域に当たると、民泊新法はその時点で候補から外れます。物件を探す段階で、都市計画図の用途地域を先に見てください。

大田区の物件相場(2026年8月)

指標

大田区

23区での順位

売出中の戸建 価格(中央値)

7,535万円(154件・延床93㎡)

高い方から13位/21区

賃貸戸建 募集賃料(中央値)

月22万円(130件・77㎡)

高い方から10位/21区

一棟収益物件 表面利回り(中央値)

4.9%(107件)

高い方から9位/23区

出典:Urbalytics マーケットレポート(大田区)。2026年8月に売出・募集されていた物件の中央値です。件数が10件に満たない指標は表示していません。

大田区は売出中の戸建の価格が23区の中位よりやや下で、売出件数も多い区です。一棟貸しに使う戸建を買って始める場合、取得コストを抑えつつ選択肢を比べやすい環境です。賃貸戸建の募集賃料は23区の中ほどで、転貸型でも家賃の負担は都心の区ほど重くありません。

一棟収益物件の表面利回りは23区で上位寄りです。普通賃貸でも一定の利回りが見込めるエリアなので、宿泊事業を選ぶなら、説明会や駆けつけ要員、ごみ回収の費用を差し引いても賃貸を上回るかを比べる必要があります。

大田区で物件を検討するときのチェックポイント

  • 用途地域を確認する。旅館業としてホテル・旅館を建築できる地域か確認する

  • 簡易宿所なら、徒歩10分以内に駆けつけられる担当者を3名以上確保できるかを見る

  • 説明会を2回以上開き、周知の範囲(20m)に入る住戸と開催場所を事前に洗い出す

  • ごみの回収頻度が週3回の回収契約の費用を、固定費に入れて試算する

  • 区分マンションは管理規約で民泊・旅館業が禁止されていないか、賃貸物件は貸主の転貸承諾と用途の承諾を書面で確認する

大田区は制度の選択肢が多い分、物件の用途地域と規模によって最適な制度が変わる区です。駆けつけ体制や清掃・ごみ回収まで含めた運営の組み方は、民泊運営代行のページで紹介しています。

よくある質問

大田区の住宅街にある戸建で、民泊新法の届出はできますか?

物件が住居専用地域にある場合は、区の上乗せ条例で営業できません。住居専用地域以外であれば、年間180日の範囲で曜日を問わず営業できます。用途地域は都市計画図で確認してください。

特区民泊と民泊新法はどちらを選べばよいですか?

特区民泊には民泊新法の180日上限がかかりませんが、区が定める要件(最低宿泊日数や対象区域など)を満たす必要があります。物件の所在地と想定する宿泊者の滞在日数をもとに、区の担当窓口で両方の要件を確認してから決めてください。

大田区の簡易宿所はキーボックスで運営できますか?

キーボックスでの鍵の受け渡しは認められています。ただし、宿泊者本人の確認、鍵を受け取ったことの確認、防犯カメラ等による出入り確認、24時間365日の電話・現場対応、徒歩でおおむね10分以内に駆け付けられる体制など、複数の要件を満たす必要があります。電話対応担当者と駆け付け担当者はそれぞれ3名以上の配置が求められます。

問い合わせ先・参考資料

  • 大田区保健所(旅館業担当):0357640693

ほかの区と比較する

条例・運用は改正や保健所の判断で変わることがあります。物件の取得や申請の前に、管轄の保健所へ事前相談してください。

アイキャッチ写真:MIKI Yoshihito / Wikimedia Commons(CC BY 4.0、トリミング)

MARKET DATA

大田区の不動産相場

2026年9月時点、大田区の戸建の売出価格の中央値は7,150万円(データ161件)で、東京都全体(5,580万円)の約1.3倍です。一棟収益物件の期待利回りの中央値は5.01%(売出価格の中央値1億6,900万円、データ121件)で、東京都全体(5.00%)とほぼ同水準です。

戸建

売出価格(中央値)
7,150万円
建物坪単価(中央値)
268.9万円/坪

2026年9月・データ161件|東京都全体 5,580万円

一棟収益物件

売出価格(中央値)
1億6,900万円
建物坪単価(中央値)
264.4万円/坪
期待利回り(中央値)
5.01%

2026年9月・データ121件|東京都全体 5.00%

出典:Urbalytics マーケットレポート(大田区)。売出情報(掲載中の物件)の月次中央値で、成約価格ではありません。期待利回りは年間想定賃料 ÷ 売出価格(表面利回り)です。

この記事について

執筆
江崎 隆信(宿泊事業マネージャー)保有資格:甲種防火管理者・第一種衛生管理者・危険物取扱者乙種4類・二級ボイラー技士

ホテル・旅館・ゴルフ場で支配人、総支配人、取締役を30年以上にわたり歴任。施設運営全般に加え、収支管理、行政対応、許認可取得、大規模改装プロジェクトを担当。グランピング施設の新規立ち上げから既存旅館の再生まで、開業準備から運営の安定化までを一貫して手掛ける。TLLでは宿泊事業の運営統括と、新規物件の開業準備をリードする。

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運営
TLL合同会社宅地建物取引業 東京都知事(1)第108202号住宅宿泊管理業 国土交通大臣(01)第F03424号

記事中のデータは出典と集計時点を明記しています。相場や制度は変わることがあるため、個別の判断は最新情報と専門家へのご相談のうえで行ってください。

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