千代田区で民泊・旅館業はできる?フロント・常駐・上乗せ条例を保健所確認ベースで整理
ユエン宿泊事業
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千代田区は23区のなかでも宿泊事業の規制が厳しい区です。特に2026年7月1日から旅館業の構造設備基準が改正され、新たに許可を取得する旅館・ホテル営業および簡易宿所営業では、総客室の延床面積を200㎡以上とする基準が追加されました。
また、旅館業(簡易宿所)では、玄関帳場(フロント)の設置と従業員の常駐が求められています。民泊新法でも、2026年7月1日以降は管理者常駐型・駆け付け型の運営が文教地区等、学校等の周辺、人口密集区域で原則としてできなくなりました。
キーボックスやスマートロックだけで無人運営するというモデルは、千代田区の旅館業では認められません。さらに、民泊新法でも管理者の常駐または駆け付け体制が必要となるため、物件を買う前、借りる前に、どの制度で・どの体制で運営するかを決めておく必要があります。
千代田区は国家戦略特区民泊の実施区域ではないため、千代田区で一般的に検討する宿泊事業の制度は、**民泊新法(住宅宿泊事業)と旅館業(簡易宿所)**の2つです。以下、それぞれで何が求められるかを、実際の運営に置き換えて説明します。
本記事の規制情報は、千代田区・千代田保健所の公開資料をもとに整理したものです(2026年10月時点)。
千代田区の民泊・旅館業規制 早見表
区分 | 項目 | 内容 |
|---|---|---|
旅館業(簡易宿所) | フロント(玄関帳場) | 必要 |
旅館業(簡易宿所) | 従業員の常駐 | 必要 |
旅館業(簡易宿所) | 客室面積 | 2026年7月1日以降の新規申請は総客室延床面積200㎡以上 |
旅館業(簡易宿所) | 近隣への周知 | 事前の周知・説明が必要 |
旅館業(簡易宿所) | 鍵の受け渡し | 玄関帳場で本人確認・鍵の受け渡し等を行う |
民泊新法(住宅宿泊事業) | 年間上限 | 180日 |
民泊新法 | 家主居住型 | 文教地区等・学校周辺では日曜正午~金曜正午が制限 |
民泊新法 | 家主不在・管理者常駐型 | 2026年7月1日以降、文教地区等・学校周辺・人口密集区域では全日制限 |
民泊新法 | 管理者駆け付け型 | 2026年7月1日以降、文教地区等・学校周辺・人口密集区域では全日制限 |
民泊新法 | その他の区域 | 条例上の区域・管理形態に応じて180日以内で営業可能 |
旅館業(簡易宿所)で営業する場合
旅館業は許可制で、民泊新法のような年間180日の営業日数上限はありません。
ただし、千代田区では設備と運営体制について厳しい基準があります。特に2026年7月1日の改正によって、新たに許可申請をする旅館・ホテル営業および簡易宿所営業では、総客室の延床面積を200㎡以上とする基準が追加されました。
施行日前に営業許可申請が受理されていた施設については経過措置があり、改正前の規定が適用されます。そのため、既存施設と新規施設では扱いが異なります。
千代田区で簡易宿所を新規開設する場合、主に次の点を確認する必要があります。
玄関帳場(フロント)の設置:宿泊者の出入りの際に営業者と利用者が応接できる構造とし、宿泊者名簿への記載に必要なカウンター等を設ける
従業員の常駐:営業中は従業員を常駐させる
鍵の適切な受け渡し:本人確認と鍵の受け渡しを行える設備・体制を整える
総客室の延床面積:2026年7月1日以降の新規申請では200㎡以上
建築・消防への適合:建築基準法、東京都建築安全条例、消防法、用途地域等への適合が必要
千代田区の公式案内では、旅館業について「客室の鍵の適切な受け渡しおよび宿泊者等の出入りの確認を可能とする設備」として玄関帳場の設置と従業員の常駐を求めています。また、玄関帳場では利用者と必ず応接できる構造とすることが求められています。
そのため、キーボックスやスマートロックだけを使ってスタッフ不在で運営することを前提に、千代田区で簡易宿所を計画するのは難しいと考えたほうがよいでしょう。
さらに、2026年7月以降の新規施設では200㎡以上という面積基準が加わったため、一般的な小規模戸建てを簡易宿所へ転用する場合は、そもそも面積要件を満たせるかを最初に確認する必要があります。
民泊新法(住宅宿泊事業)で営業する場合
民泊新法は届出制で、全国一律で年間180日が上限です。千代田区ではこれに加えて、区独自の条例によって、区域と管理形態に応じて営業できる期間が制限されています。
ここで特に注意したいのが、2026年7月1日の条例改正です。
改正前は、人口密集区域では「管理者常駐型」であれば180日営業できました。しかし、2026年7月1日以降は、家主不在型の管理者常駐型・管理者駆け付け型の民泊について、文教地区等、学校等の周辺、人口密集区域では全日営業できないルールに変更されました。
一方、家主居住型については、文教地区等・学校周辺では日曜日の正午から金曜日の正午まで営業が制限されますが、人口密集区域では180日の範囲内で営業できます。
2026年7月1日以降の主な制限
区域 | 家主居住型 | 家主不在・管理者常駐型 | 家主不在・管理者駆け付け型 |
|---|---|---|---|
文教地区等 | 日曜正午~金曜正午 不可 | 全日不可 | 全日不可 |
学校等の周辺 | 日曜正午~金曜正午 不可 | 全日不可 | 全日不可 |
人口密集区域 | 180日 | 全日不可 | 全日不可 |
人口が密集していない区域 | 180日 | 180日 | 180日 |
「学校等の周辺」は、学校等の敷地境界線からおおむね100m以内です。また、人口密集区域は条例の別表で定められた町丁が対象となります。
つまり、現在の千代田区では、家主不在型で管理者を常駐させても、人口密集区域だから営業できるとは限りません。
物件を探す場合は、「家主不在型でも管理者を近くに置けば大丈夫」と考えるのではなく、まず住所がどの制限区域に入るかを確認する必要があります。
なお、管理者駆け付け型については、千代田区のガイドライン上、管理者の常駐場所から届出住宅まで半径700m以内かつ10分以内で駆け付けられる体制が必要です。ただし、2026年7月1日以降は、文教地区等・学校周辺・人口密集区域では、この形態も全日制限の対象となります。
千代田区の民泊・旅館業の営業日数
運営の形 | 年間の営業上限(目安) | 主な条件 |
|---|---|---|
旅館業(簡易宿所) | 365日 | 年間営業日数の上限なし。ただし許可・設備基準あり |
民泊・家主居住型 | 180日 | 区域によって曜日制限あり |
民泊・家主不在型/管理者常駐 | 180日 | 2026年7月以降、制限区域では全日不可 |
民泊・家主不在型/駆け付け | 180日 | 2026年7月以降、制限区域では全日不可 |
180日は、4月1日から翌年3月31日までの1年間で計算し、正午から翌日正午までを1日として数えます。
したがって、元の記事にある「家主不在型は金曜・土曜のみ」という説明は、2026年10月時点では正確ではありません。
現在は、単純に「金土のみ」とまとめるのではなく、家主居住型か、家主不在型か、管理者が常駐するか、駆け付け型か、さらに物件がどの区域にあるかを組み合わせて判断する必要があります。
千代田区の物件相場(2026年8月)
指標 | 千代田区 | 23区での順位 |
|---|---|---|
売出中の戸建 価格(中央値) | データ不足(1件) | — |
賃貸戸建 募集賃料(中央値) | データ不足(3件) | — |
一棟収益物件 表面利回り(中央値) | 3.1%(24件) | 高い方から22位/23区 |
出典:Urbalytics マーケットレポート(千代田区)。2026年8月に売出・募集されていた物件の中央値です。件数が10件に満たない指標は表示していません。
千代田区は売出中の戸建も賃貸戸建も流通量が少なく、戸建を買う・借りて民泊にするという選択肢そのものが限られます。
また、一棟収益物件の表面利回りも23区の中では低い水準です。
さらに、旅館業では2026年7月から新規施設に200㎡以上の総客室延床面積が求められるため、一般的な小規模戸建てを簡易宿所へ転用するモデルは、以前より検討しにくくなっています。
宿泊事業で普通賃貸より高い収益を狙う場合でも、フロント・常駐スタッフの人件費、建築・消防工事費、200㎡以上の面積要件などを含めて収支を計算する必要があります。
どちらの制度を選ぶか
千代田区では、現在の規制を考えると、小規模な戸建てや区分マンションを購入して、無人型の宿泊施設として運営するモデルは特に慎重に検討する必要があります。
旅館業は年間営業日数の上限がない一方、フロント・従業員常駐が必要で、2026年7月1日以降の新規申請では総客室延床面積200㎡以上という基準も加わりました。
そのため、簡易宿所を検討する場合は、最初から一定規模の一棟物件を候補にし、常駐スタッフを配置しても収支が成立するかを確認することが重要です。
一方、民泊新法は200㎡という旅館業の基準はありませんが、年間180日の上限があり、さらに千代田区では区域と管理形態による厳しい営業制限があります。
特に家主不在型では、2026年7月1日以降、文教地区等・学校周辺・人口密集区域で管理者を常駐させても営業できません。
したがって、民泊新法を選ぶ場合は、物件を契約する前に住所をもとに制限区域を確認することが最重要です。
なお、旅館業は用途地域の制約も受けます。旅館・ホテルを新設する場合は、用途地域だけでなく、文教地区、建築基準法、東京都建築安全条例、消防法などを含めて確認する必要があります。千代田区も計画段階で建築指導課や消防署への相談を案内しています。
千代田区で物件を検討するときのチェックポイント
まず「旅館業」と「民泊新法」のどちらで運営するかを決める
旅館業の場合、2026年7月1日以降の新規申請なら総客室延床面積200㎡以上を確保できるか確認する
旅館業の場合、玄関帳場と従業員の常駐スペースを確保できるか確認する
フロント・常駐スタッフを配置した場合でも収支が成立するか試算する
民泊の場合、家主居住型・管理者常駐型・駆け付け型のどれに該当するか確認する
文教地区・地区計画、学校等からおおむね100m以内に該当するか確認する
人口密集区域に該当するか確認する
2026年7月1日以降の新規届出なら、管理者常駐型でも制限区域では営業できない点に注意する
駆け付け型を選ぶ場合、700m以内・10分以内の要件を確認する
用途地域と文教地区の指定を、住所だけで判断せず都市計画図で確認する
旅館業の場合、建築基準法・消防法への適合工事を事前に確認する
区分マンションの場合、管理規約で民泊・旅館業が禁止されていないか確認する
賃貸で借りる場合は、貸主から転貸・宿泊事業について書面で承諾を得る
規制の重さを考えると、千代田区は「小さな戸建てを買って無人運営」というモデルより、旅館業なら200㎡以上の規模を確保でき、常駐スタッフを置いても採算が合う物件、または民泊新法なら制限区域外の物件を選ぶことが重要です。
よくある質問
千代田区でキーボックスを使った無人の簡易宿所はできますか?
千代田区の旅館業では、玄関帳場の設置と従業員の常駐が求められているため、キーボックスだけでスタッフ不在の簡易宿所を運営することはできません。
千代田区は、宿泊者の出入りを確認し、本人確認や鍵の適切な受け渡しができる設備として玄関帳場を求めています。
2026年7月から何が変わりましたか?
旅館業では、新たに許可申請をする旅館・ホテル営業および簡易宿所営業について、総客室の延床面積200㎡以上という構造設備基準が追加されました。
また、民泊新法では、家主不在型の管理者常駐型・駆け付け型について、文教地区等、学校等の周辺、人口密集区域で全日営業できないルールに変更されました。
いずれも2026年7月1日より前に申請・届出が受理されている施設には経過措置があります。
家主不在型の民泊は千代田区で営業できますか?
区域によります。
2026年7月1日以降、家主不在型の管理者常駐型・駆け付け型は、文教地区等、学校等の周辺、人口密集区域では営業できません。
それ以外の区域では、一定の条件を満たせば年間180日の範囲で営業できます。
管理者を10分以内に駆け付けさせれば民泊できますか?
駆け付け型の場合、千代田区では管理者常駐場所から届出住宅まで半径700m以内かつ10分以内という要件があります。
ただし、2026年7月1日以降は、文教地区等・学校周辺・人口密集区域では駆け付け型自体が全日制限の対象となります。
そのため、「10分以内ならどこでも民泊できる」という意味ではありません。
千代田区で旅館業を始めるなら、どんな物件が向いていますか?
2026年7月以降の新規許可では総客室延床面積200㎡以上が必要になるため、小規模な戸建てより、一定規模の一棟物件のほうが検討しやすいと考えられます。
ただし、フロントと従業員の常駐が必要になるため、客室面積だけでなく、フロント・スタッフスペース・共用設備などを含めて計画する必要があります。
また、旅館業は建築・消防・用途地域などの確認も必要になるため、物件契約前に千代田保健所と建築・消防関係の窓口へ事前相談することをおすすめします。
上乗せ条例の対象かどうかはどこで確認できますか?
民泊新法の届出は区の担当課、旅館業の許可は千代田保健所が窓口です。どちらも事前相談を受け付けているので、物件の住所と図面を持って相談すると、その場で判断してもらいやすくなります。
ほかの区と比較する
条例・運用は改正や保健所の判断で変わることがあります。物件の取得や申請の前に、管轄の保健所へ事前相談してください。
MARKET DATA
千代田区の不動産相場
2026年9月時点、千代田区の一棟収益物件の期待利回りの中央値は3.45%(売出価格の中央値3億9,800万円、データ38件)で、東京都全体(5.00%)より1.55ポイント低い水準です。
戸建
直近の売出件数が少ないため、中央値は公表していません(1か月10件未満)。
出典:Urbalytics マーケットレポート(千代田区)。売出情報(掲載中の物件)の月次中央値で、成約価格ではありません。期待利回りは年間想定賃料 ÷ 売出価格(表面利回り)です。
この記事について
- 執筆
- ユエン(宿泊事業)
宿泊施設運営およびホスピタリティオペレーション分野で5年以上の経験を有する。日本国内の宿泊施設において、許認可取得、ゲスト対応、運営オペレーション、スタッフ連携など幅広い業務を主導。
プロフィールを見る → - 運営
- TLL合同会社宅地建物取引業 東京都知事(1)第108202号住宅宿泊管理業 国土交通大臣(01)第F03424号
記事中のデータは出典と集計時点を明記しています。相場や制度は変わることがあるため、個別の判断は最新情報と専門家へのご相談のうえで行ってください。

















