植栽のあるバルコニーが並ぶ白い外観の集合住宅

東京23区の売出在庫の推移【2026年9月】一棟・区分の増減と、在庫が増えた区・減った区

須藤 栄一(宅地建物取引士)仕入

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売却を考えるとき、価格や利回りと並んで気になるのが「いま同じエリアにどれだけ売り物が出ているか」です。売り出されている物件が多ければ、買い手は比べる対象が増え、価格や条件の交渉が起きやすくなります。逆に少なければ、自分の物件が目に留まりやすくなります。

この記事では、TLL合同会社が運営する Urbalytics の公開マーケットレポート(2026年9月集計)から、東京23区の一棟収益物件と区分マンションの売出在庫(月次のデータ件数)を区ごとに合算し、前年同月(2025年9月)との増減を整理しました。数字の性質上、読み方に注意が必要な点もあわせて説明します。

この記事のポイント

  • 東京23区の一棟収益物件の売出在庫(各区のデータ件数の合計)は、2025年9月の1,670件から2026年9月の1,946件へ、前年同月比で16.5%増えました(Urbalytics マーケットレポート)。
  • 一棟収益の件数が前年同月より増えたのは23区中19区で、葛飾区(60件→94件、+56.7%)や新宿区(89件→127件、+42.7%)の増加が目立ち、減ったのは足立区(141件→117件、−17.0%)・江戸川区・品川区・杉並区の4区でした。
  • 区分マンションの23区計は10,118件から13,928件(+37.7%)でしたが、2026年6月に19,395件を記録するなど月ごとの振れが大きく、データの収集範囲の変化を含んでいる可能性があります。

東京23区の売出在庫はどう推移したか

一棟収益物件の23区計は、2025年9月の1,670件から2026年9月の1,946件へ増えました。月ごとに見ると、2025年11月から2026年3月にかけては1,500件前後で推移し、2026年5月以降は1,680〜2,122件と多い水準が続いています。

集計月一棟収益(23区計)区分マンション(23区計)
2025年9月1,670件10,118件
2025年10月1,775件10,106件
2025年11月1,569件9,741件
2025年12月1,531件9,478件
2026年1月1,506件9,587件
2026年2月1,467件10,696件
2026年3月1,566件11,988件
2026年4月(1,170件・欠測)10,338件
2026年5月1,680件16,424件
2026年6月2,122件19,395件
2026年7月1,744件15,459件
2026年8月1,795件11,959件
2026年9月1,946件13,928件

出典:Urbalytics マーケットレポート(エリア別・東京都、各区の一棟収益・区分マンションのページの月次データ件数)をTLLが23区分合算。件数はUrbalyticsが収集した売出情報(売出中・成約を含む)の当月件数で、成約件数ではありません。2026年4月の一棟収益は収集元の一つが取得できておらず、件数が実勢より約35%少なく出ている欠測月です。集計月:2026年9月(2026年10月2日に閲覧)。

東京23区の一棟収益物件の月次データ件数の推移。2025年9月1,670件から2026年9月1,946件へ増加。2026年4月は収集元の欠測のため空白。
東京23区 一棟収益の月次データ件数(23区計)(出典:Urbalytics マーケットレポート(エリア別・一棟収益、23区の各区ページを合算))

2026年4月の一棟収益の1,170件は、Urbalyticsの各区ページに「収集元の一つ(楽待)が2026年4月のみ取得できておらず、データ件数が実勢より約35%少なく出る」と明記されている欠測月です。市場で売り物が急に減ったわけではないため、グラフでは空白にしています。

東京23区の区分マンションの月次データ件数の推移。2025年9月10,118件、2026年6月19,395件、2026年9月13,928件と月ごとの振れが大きい。
東京23区 区分マンションの月次データ件数(23区計)(出典:Urbalytics マーケットレポート(エリア別・区分マンション、23区の各区ページを合算))

区分マンションは、2025年9月の10,118件から2026年5〜6月に16,000〜19,000件台まで増え、9月には13,928件に戻りました。半年ほどの間にこれほど大きく件数が動くのは、市場の在庫の増減だけでは説明しにくく、データの収集範囲の変化も含んでいる可能性があります。区分マンションの件数の増減は、参考値として扱うのが安全です。

在庫が増えている区・減っている区(一棟収益)

一棟収益物件の件数を区ごとに前年同月と比べると、23区のうち19区で増え、4区で減りました。増加率が大きいのは千代田区(16件→38件)、葛飾区(60件→94件)、新宿区(89件→127件)、中央区(24件→33件)、港区(32件→43件)です。減ったのは足立区(141件→117件)、江戸川区(108件→93件)、品川区(51件→47件)、杉並区(123件→122件)でした。

区一棟 2025年9月一棟 2026年9月前年同月比区分 2025年9月区分 2026年9月前年同月比
千代田区16件38件+137.5%192件311件+62.0%
葛飾区60件94件+56.7%269件331件+23.0%
新宿区89件127件+42.7%726件927件+27.7%
中央区24件33件+37.5%617件1,068件+73.1%
港区32件43件+34.4%843件1,349件+60.0%
荒川区48件64件+33.3%202件255件+26.2%
墨田区59件77件+30.5%351件382件+8.8%
渋谷区44件56件+27.3%513件761件+48.3%
目黒区31件39件+25.8%307件444件+44.6%
練馬区88件110件+25.0%435件510件+17.2%
世田谷区112件138件+23.2%745件935件+25.5%
大田区99件121件+22.2%589件637件+8.1%
北区60件73件+21.7%245件329件+34.3%
板橋区110件131件+19.1%510件627件+22.9%
台東区76件90件+18.4%372件480件+29.0%
文京区33件39件+18.2%318件474件+49.1%
江東区52件61件+17.3%663件1,056件+59.3%
中野区109件125件+14.7%269件425件+58.0%
豊島区105件108件+2.9%406件588件+44.8%
杉並区123件122件−0.8%405件508件+25.4%
品川区51件47件−7.8%442件743件+68.1%
江戸川区108件93件−13.9%269件292件+8.6%
足立区141件117件−17.0%430件496件+15.3%

出典:Urbalytics マーケットレポート(エリア別・東京都、各区の一棟収益・区分マンションのページ)。件数は売出中・成約を含む当月のデータ件数。区分マンションの件数は月ごとの振れが大きく、収集範囲の変化を含む可能性があります。集計月:2026年9月。

一棟収益物件のデータ件数を2025年9月と2026年9月で比べた棒グラフ。千代田区・葛飾区・新宿区・中央区・荒川区で増え、足立区・江戸川区・品川区・杉並区で減った。
一棟収益のデータ件数 前年同月との比較(出典:Urbalytics マーケットレポート(エリア別・一棟収益、2026年9月集計))

増加率の数字は、もとの件数が少ない区ほど大きく出ます。千代田区の+137.5%は16件から38件への変化で、件数そのものは22件の増加です。区の比較には、増加率だけでなく件数の実数もあわせて見てください。

ノートパソコンの上で書類を手に持って確認している様子
書類とノートパソコンで数字を確認する様子(イメージ)Photo: Jakub Żerdzicki / Unsplash

在庫が増えた背景として考えられること

このデータからは、件数が増えた理由を特定することはできません。そのうえで、一般的に考えられる要因を挙げると次のとおりです。

  • 売却に動くオーナーの増加:価格が高い水準にあると判断したオーナーが売りに出す動きや、相続・資産の組み替えによる売却が増えると、売出在庫は増えます。
  • 売れるまでの期間の長期化:新しく売りに出る物件が同じでも、成約までの期間が延びれば、各月に掲載されている物件は積み上がります。
  • 価格の見直し:Urbalyticsの値下げウォッチによると、2026年8月に東京都で値下げされた一棟収益物件は767件、下げ幅の中央値は−5.0%でした。売出価格を見直しながら掲載が続く物件が一定数あることがわかります。
  • データの収集範囲:集計の対象となる掲載元や取得の状況が変わると、件数は市場の動きと関係なく増減します。とくに区分マンションでは、この影響に注意が必要です。

なお、件数が増えた区で利回りが大きく動いたとは限りません。たとえば葛飾区の表面利回りは5.67%から5.63%、新宿区は4.29%から4.21%とほぼ横ばいでした。区別の利回りは「東京23区 一棟収益物件の表面利回りランキング【2026年9月】」で詳しく整理しています。

売り手・オーナーが確認すべきこと

在庫のデータを売却の判断に使うときは、次の順で確認すると読み違いを減らせます。

  1. 所在区の件数を確認する:一棟収益の当月件数と、前年同月の件数を比べます。
  2. 増減の理由を切り分ける:欠測月(2026年4月)や、収集範囲の変化による増減でないかを確かめます。
  3. 利回り・坪単価もあわせて見る:件数が増えると同時に、利回りが上がっている(価格が下がっている)かどうかを確認します。
  4. 競合になる物件を把握する:区全体ではなく、同じ駅・同じくらいの規模・価格帯の売り物がいくつあるかを数えます。
  5. 売出価格と時期を決める:複数の査定を比べ、売り出したあとの反響を見て価格を見直す前提で計画します。
売出在庫のデータを売却判断に使う5つの手順を示す図。
在庫データを売却の判断に使う手順

同じエリアに競合が多い時期は、売出価格の設定と見せ方が成約までの期間に影響しやすくなります。TLLの無料査定では、周辺の売出・成約事例と賃料の水準から、物件ごとの価格の考え方と売り出しの進め方をご説明しています。買取と仲介の選び方は「一棟アパートは買取と仲介どちらで売る?」、全体の手順は「収益物件売却の流れ」をご覧ください。

道路の中央に引かれた歩行者用の白線
街なかの道路と白線(イメージ)Photo: Risto Kokkonen / Unsplash

よくある質問

Q. 「売出在庫」は売れ残っている物件の数ですか?

いいえ。Urbalyticsの件数は、その月にデータを取得できた売出情報の件数で、売出中の物件と成約した物件の両方を含みます。売れ残りだけの数でも、成約件数でもありません。

Q. 在庫が増えている区では、売却を急いだほうがよいですか?

件数の増加だけで売却の時期を決める必要はありません。利回りや価格の動き、同じ規模の競合物件の数、ご自身の保有方針をあわせて判断することをおすすめします。

Q. 2026年4月に件数が大きく減っているのはなぜですか?

一棟収益物件について、収集元の一つが2026年4月のみ取得できておらず、件数が実勢より約35%少なく出ているためです。市場の動きではありません。

Q. 区分マンションの件数はなぜ大きく変動しているのですか?

月ごとの振れが大きく、市場の在庫の増減に加えて、データの収集範囲の変化を含んでいる可能性があります。区分マンションの件数は、他の指標とあわせて参考値として見るのが安全です。

まとめ

  • 東京23区の一棟収益物件の売出在庫は、2025年9月1,670件から2026年9月1,946件へ16.5%増えました。
  • 23区中19区で一棟収益の件数が増え、葛飾区(+56.7%)・新宿区(+42.7%)などが目立ちました。減ったのは足立区・江戸川区・品川区・杉並区の4区です。
  • 2026年4月の一棟収益は欠測月で、区分マンションの件数は収集範囲の変化を含む可能性があるため、増減の読み方に注意が必要です。
  • 売却を考える際は、件数とあわせて利回り・価格の動きと、同じ駅・同じ規模の競合物件を確認しましょう。

アイキャッチ画像(イメージ):Photo: Ben Rong / Unsplash

この記事について

執筆
須藤 栄一(仕入)保有資格:宅地建物取引士・損害保険募集人

首都圏の収益物件・事業用不動産を対象に、案件の発掘から仕入れ、再販計画までを担当する。 不動産業界で25年以上、野村不動産ソリューションズや大京穴吹不動産などで売買実務に従事。都心部から首都圏郊外までの業者ネットワークを活かし、未公開案件や再生余地のある物件の仕入れに取り組んでいる。宅地建物取引士。 仕入れでは、賃貸状況と建物・権利関係を確認し、改修費用と再販時の価格を含めて事業収支を検討する。購入時点の価格交渉にとどまらず、どこを改善し、どのように売却するかまで見据えることを重視。コラムでは、入居者付き物件の売却や築古・借地権など、条件に応じた売り方を解説している。

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TLL合同会社宅地建物取引業 東京都知事(1)第108202号住宅宿泊管理業 国土交通大臣(01)第F03424号

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