上空から見た中高層の建物が密集する都市の街並み

東京23区 一棟収益物件の表面利回りランキング【2026年9月】区別の水準と前年同月比

譚 深(宅地建物取引士)創業者

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「自分のアパートがある区の利回りは、いまどのくらいなのか」「1年前と比べて上がったのか下がったのか」。売却や買い替えを考えはじめたオーナーの方から、よくいただく質問です。表面利回りは物件の価格水準をざっくり測る物差しなので、区ごとの水準と前年からの動きを知っておくと、査定額や売出価格の妥当性を考える手がかりになります。

この記事では、TLL合同会社が運営する不動産データサービス Urbalytics の公開マーケットレポート(2026年9月集計)から、東京23区の一棟収益物件の表面利回りを区別に並べ、前年同月(2025年9月)からの変化を整理しました。数字は売り出し中の物件の「売出価格」ベースで、成約価格ではない点に注意してお読みください。

この記事のポイント

  • 2026年9月の東京23区の一棟収益物件の表面利回り(区別中央値)は、葛飾区5.63%が最も高く、中央区2.77%が最も低く、差は約2.9ポイントでした(Urbalytics マーケットレポート、売出データ)。
  • 東京都全体の表面利回り中央値は5.16%(2025年9月)から5.00%(2026年9月)へ16bps低下し、23区のうち15区で前年同月より利回りが低くなっています。
  • 前年同月比の低下幅が大きかったのは中央区・中野区(いずれも−75bps)と品川区(−61bps)、上昇幅が大きかったのは練馬区(+51bps)と文京区(+42bps)でした。

東京23区の一棟収益物件の表面利回りランキング(2026年9月)

2026年9月時点で表面利回りが高いのは、葛飾区(5.63%)、練馬区(5.58%)、足立区(5.50%)の順で、低いのは中央区(2.77%)、港区(3.20%)、千代田区(3.45%)でした。城東・城北の外周区ほど利回りが高く、都心ほど低いという並びは、価格水準の差をそのまま映しています。

表面利回りは「年間の賃料収入÷売出価格」です。同じ賃料なら価格が高いほど利回りは低くなるため、利回りが低い区は「賃料に対して価格が高い区」、利回りが高い区は「賃料に対して価格が抑えられている区」と読めます。経費や空室を差し引く前の数字で、実際の手取りの利回りではありません。

順位区2026年9月件数2025年9月件数前年同月比
1葛飾区5.63%94件5.67%60件−4bps
2練馬区5.58%110件5.07%88件+51bps
3足立区5.50%117件5.68%141件−18bps
4江戸川区5.27%93件5.43%108件−16bps
5板橋区5.27%131件5.38%110件−11bps
6江東区5.11%61件4.76%52件+35bps
7荒川区5.06%64件5.04%48件+2bps
8大田区5.01%121件5.00%99件+1bps
9中野区4.83%125件5.58%109件−75bps
10北区4.82%73件5.14%60件−32bps
11杉並区4.76%122件4.68%123件+8bps
12墨田区4.64%77件4.72%59件−8bps
13豊島区4.58%108件4.50%105件+8bps
14台東区4.53%90件4.40%76件+13bps
15品川区4.38%47件4.99%51件−61bps
16世田谷区4.34%138件4.67%112件−33bps
17新宿区4.21%127件4.29%89件−8bps
18文京区4.12%39件3.70%33件+42bps
19目黒区3.82%39件4.03%31件−21bps
20渋谷区3.53%56件3.93%44件−40bps
21千代田区3.45%38件4.02%16件−57bps
22港区3.20%43件3.33%32件−13bps
23中央区2.77%33件3.52%24件−75bps

出典:Urbalytics マーケットレポート(エリア別・東京都、各区の一棟収益ページ)。対象はUrbalyticsが収集した一棟収益物件の売出情報(売出中・成約を含む)の月次中央値で、外れ値はIQR法で除外。件数は当月のデータ件数。bpsは0.01ポイント。集計月:2026年9月(2026年10月2日に閲覧)。

東京23区の一棟収益物件の表面利回り中央値を区別に高い順に並べた横棒グラフ。葛飾区5.63%が最も高く、中央区2.77%が最も低い。
東京23区 一棟収益の表面利回り(区別中央値)(出典:Urbalytics マーケットレポート(エリア別・一棟収益、2026年9月集計))

東京都全体(23区と多摩・島しょを含む)の表面利回り中央値は、2026年9月で5.00%(データ2,394件)です。23区で東京都平均を上回ったのは、葛飾・練馬・足立・江戸川・板橋・江東・荒川・大田の8区でした。

前年同月比で利回りが大きく動いた区

2025年9月と比べると、23区のうち15区で表面利回りが低下し、8区で上昇しました(うち荒川区+2bps、大田区+1bpsはほぼ横ばい)。低下幅が大きかったのは中央区(3.52%→2.77%)、中野区(5.58%→4.83%)、品川区(4.99%→4.38%)、千代田区(4.02%→3.45%)です。上昇したのは練馬区(5.07%→5.58%)、文京区(3.70%→4.12%)、江東区(4.76%→5.11%)などでした。

中央区・中野区・品川区・千代田区は表面利回りが前年同月より低下し、練馬区・文京区・江東区は上昇したことを示す棒グラフ。
前年同月比で表面利回りが大きく動いた区(出典:Urbalytics マーケットレポート(エリア別・一棟収益、2026年9月集計))

利回りが下がる動きには、大きく分けて二つの可能性があります。一つは、賃料が変わらないまま売出価格が上がったケースです。もう一つは、売り出される物件の顔ぶれが変わったケースで、たとえば新築や築浅の物件、駅に近い物件の割合が増えると、それだけで中央値の利回りは下がります。中央値は「その月に売り出された物件」の真ん中の値なので、相場そのものの変化と、物件構成の変化が混ざって表れます。

件数にも注意が必要です。千代田区の2025年9月はデータ16件、中央区は24件と少なく、1〜2件の入れ替わりで中央値が動く水準です。Urbalyticsの各区ページでも、データ10〜30件程度の月は「1件の増減で動く」と注記されています。大きな変化幅が出た区ほど、件数と合わせて読むことをおすすめします。

駐車場の奥に並ぶ中層の集合住宅
駐車場越しに見る中層の集合住宅(イメージ)Photo: PJH / Unsplash

なぜ利回りが動いたのか:考えられる要因

このデータからは、利回りが動いた理由を一つに特定することはできません。そのうえで、一般的に考えられる要因を整理すると次のとおりです。

  • 価格の変化:売り手の希望価格が上がれば、同じ賃料でも利回りは下がります。都心の中央区・千代田区や、中野区・品川区の低下には、この要素が含まれている可能性があります。
  • 物件構成の変化:新築・築浅や大型の物件が多く売り出された月は、利回りの中央値が下がりやすくなります。逆に築古や小規模の物件が増えると上がりやすくなります。
  • 賃料の変化:賃料が上がって価格が据え置かれれば、利回りは上がります。練馬区や江東区の上昇がどちらによるものかは、この集計だけでは判断できません。
  • 金利・融資環境:一般に、借入金利が上がると買い手が求める利回りも上がりやすく、価格の上値を抑える方向に働くとされます。ただし区ごとの差を説明できるほどの関係は、このデータからは読み取れません。

各区のページでは、売出価格・建物坪単価・建物面積の推移も公開されています。たとえば利回りが下がった区で建物面積の中央値も大きく動いていれば、物件構成の変化の影響が大きいと推測できます。価格・利回りの読み方は「一棟アパートの査定額はどう決まる?」でも解説しています。

オーナー・投資家が確認すべきこと

区のランキングは、自分の物件の位置を知るための出発点です。次の順で確認すると、ランキングを実際の判断に使いやすくなります。

  1. 所在区の中央値と件数を確認する:上の表で、所在区の2026年9月の値と件数、前年同月の値を見ます。
  2. 自分の物件の表面利回りを計算する:現況の年間賃料を、想定する売出価格で割ります。満室想定か現況かで数字が変わるので、どちらで計算したかを決めておきます。
  3. 差を0.01ポイント(bps)単位で把握する:区の中央値より利回りが低ければ価格は強気、高ければ控えめという目安になります。
  4. 差の理由を整理する:築年数、構造、駅からの距離、空室、土地の広さ・形状など、中央値との差を説明できる要素を並べます。
  5. 実質利回りで確かめる:管理費・修繕費・固定資産税・空室を差し引いた手取りベースで比べ直します。
区別の表面利回りを自分の物件に当てはめる5つの手順を示す図。
利回りランキングを自分の物件に当てはめる手順

売却を検討している場合、区の中央値はあくまで目安で、実際の価格は個別の条件で大きく変わります。TLLの無料査定では、周辺の売出・成約の事例と賃料の水準をもとに、物件ごとの価格の考え方をご説明しています。売却の全体の流れは「収益物件売却の流れ」にまとめています。

方眼紙に手書きした折れ線グラフと定規、ペン
手書きの折れ線グラフと定規(イメージ)Photo: Isaac Smith / Unsplash

よくある質問

Q. この利回りは成約価格にもとづく数字ですか?

いいえ。Urbalyticsが収集した売出情報(売出中・成約を含む)の売出価格にもとづく表面利回りの中央値です。実際の成約価格は売出価格より低くなることが多く、成約ベースの利回りはこれより高くなる傾向があります。

Q. 利回りが下がったのは、価格が上がったということですか?

賃料が一定であれば、利回りの低下は価格の上昇を意味します。ただし中央値はその月に売り出された物件の構成によっても動くため、利回りの低下がそのまま相場の上昇を示すとは限りません。

Q. 件数が少ない区の数字は信用できますか?

データ10〜30件程度の月は、1〜2件の入れ替わりで中央値が動きます。千代田区(2025年9月16件)や中央区(同24件)のように件数が少ない区は、前後の月の推移と合わせて見るのが安全です。

Q. 自分の物件の利回りが区の中央値より低い場合、売りにくいですか?

一概には言えません。築浅・駅近・土地が広いなど、中央値より利回りが低くても買い手が付く条件はあります。個別の条件を踏まえた価格の考え方は、査定で確認することをおすすめします。

まとめ

  • 2026年9月の東京23区の一棟収益の表面利回り(区別中央値)は、葛飾区5.63%が最も高く、中央区2.77%が最も低い結果でした。
  • 東京都全体の中央値は前年同月比で16bps低下(5.16%→5.00%)し、23区のうち15区で利回りが下がりました。
  • 中央区・中野区(−75bps)、品川区(−61bps)が大きく低下し、練馬区(+51bps)、文京区(+42bps)が上昇しましたが、価格の変化と物件構成の変化が混ざっている可能性があります。
  • 自分の物件の利回りを区の中央値と比べ、差の理由を整理したうえで、実質利回りや個別の査定で確かめることが大切です。

アイキャッチ画像(イメージ):Photo: George Kedenburg III / Unsplash

この記事について

執筆
譚 深(創業者)保有資格:宅地建物取引士・ビル経営管理士・米国認定バイヤーズエージェント

不動産投資・ファンド組成・デジタル戦略を横断するシリアルアントレプレナー。McKinsey & Company にて日本・大中華圏の金融機関および不動産デベロッパー向けに、組織再編・DX・新規事業戦略を主導。アマゾンジャパンでは大規模 EC プロダクトの設計責任者を務めた。TLL 創業後は、収益不動産の取得・再生・運用からファンド組成までを一気通貫で手掛け、データ起点の投資判断モデルを構築。

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運営
TLL合同会社宅地建物取引業 東京都知事(1)第108202号住宅宿泊管理業 国土交通大臣(01)第F03424号

記事中のデータは出典と集計時点を明記しています。相場や制度は変わることがあるため、個別の判断は最新情報と専門家へのご相談のうえで行ってください。

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