陸屋根に防水材を施工する作業

アパートの雨漏り・漏水が起きたら|オーナーの初動、責任の範囲、火災保険・施設賠償の使い方

栗原 瑞樹(宅地建物取引士)PM事業

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入居者から「天井から水が落ちている」と連絡が来たとき、オーナーは保険の支払可否を待たずに、安全確保と被害拡大の防止を進めます。原因が屋根なのか、上階の給排水なのかによって、修理する場所も費用の扱いも変わります。

復旧工事の費用、入居者の家財の損害、家賃の減額は別々に整理します。事故の初動から責任と保険の確認まで、2026年10月9日時点の法令と公表資料に基づいてまとめます。

この記事のポイント

  • 安全確保と止水、写真・時刻の記録を先に行い、原因と責任は調査後に判断します。
  • 建物の修繕費、自分の建物の水濡れ損害、第三者への賠償は同じ補償ではありません。
  • 家賃減額は使用できない範囲と期間で確認し、一律の割合や保険金を保証できません。

漏水の連絡を受けたときの初動

感電や天井落下の危険があれば、その場所から離れてもらいます。濡れた電気設備に触る、無理に天井を開ける、雨の中で屋根に上がるといった作業は避け、必要な対応を専門業者に依頼します。

安全に操作できる場合は止水栓などで水を止めます。建物全体を止水するなら影響する住戸へ知らせ、入室調査は入居者と調整します。上階からの水に見えても、配管経路を確認するまでは原因を決めつけません。

  1. 危険箇所から退避し、建物と入居者の安全を確認する。
  2. 安全な範囲で止水し、受け皿や養生などで被害を抑える。
  3. 発見時刻、天候、水の出方、写真、連絡履歴を記録し、業者と保険会社へ連絡する。
  4. 原因調査、応急修理、本復旧、入居者の使用再開を調整する。
安全を確保→被害を抑える→記録と連絡→原因調査と復旧
雨漏り・漏水の初動(出典:本文の確認項目をTLLが整理(2026-10-09))

保険会社には応急処置の必要性と工事の範囲を早めに伝えます。調査前にすべて撤去すると原因の確認が難しくなるため、安全上必要な工事は進めながら、撤去前の写真と交換部材の記録を残します。

木製の机に置かれた書類とペン
木製の机に置かれた書類とペン(イメージ)Photo: 2H Media / Unsplash

オーナーと入居者の責任はどう分けるか

貸主には原則として使用・収益に必要な修繕義務があります。ただし、借主の責めに帰すべき事由で修繕が必要になった場合は民法上の扱いが異なります。原因、契約、過失を確認して費用負担を判断します(民法の賃貸借規定)。

屋根や外壁の不具合、共用配管の劣化は建物側の修繕として確認することが多く、洗濯機のホース外れなどは設置・使用状況を調べます。原因箇所が特定できていない段階で「上の住戸の責任」と断定しないようにします。

国土交通省の原状回復ガイドラインQ&Aは、水漏れなどを貸主へ知らせず被害を拡大させた場合、借主に賠償が求められる可能性を示しています。報告を受けた側も、調査の手配と対応の記録を残します。

修繕義務と損害賠償責任は別の問題です。故障を直す必要があっても、すべての家財や宿泊費を当然に賠償するとは限りません。請求された損害と事故の因果関係、必要性を整理し、保険会社や弁護士と確認します。

火災保険と施設賠償はどの費用に使うか

自分の建物の損害を補償する保険と、他人への法律上の賠償責任を補償する保険は目的が違います。火災保険の「水濡れ」と、洪水などの「水災」も区別します。

費用・損害確認する保険確認点
水で傷んだ建物の内装建物の火災保険・水濡れ補償事故原因、対象、免責
壊れた配管や劣化した防水層設備・特約・自己負担を個別確認原因部分そのものは対象外の場合あり
入居者や隣家の財物施設賠償・賃貸建物所有者賠償等法律上の責任、事故、対象施設
入居者の家財本人の家財保険等も確認保険の対象と責任の関係
失った家賃・臨時費用家賃収入等の特約付帯の有無、支払条件

日本損害保険協会の火災保険説明では、給排水設備事故等による水濡れは契約内容によって補償が異なります。保険会社の補償案内も、建物の水濡れと水災を分けています。

水濡れで傷んだ天井が対象になっても、老朽化した配管の交換や防水の更新まで支払われるとは限りません。単なる雨の吹込みや経年劣化による雨漏り、風災等で損傷してから起きた雨漏りでは、事故の扱いが変わります。原因報告書と保険約款を照らし合わせます。

施設所有・管理者賠償などは、施設の欠陥や管理の不備による事故で法律上の賠償責任を負う場合の補償です(三井住友海上の施設賠償説明)。給排水設備事故の除外や特約、対象施設の登録は商品ごとに確認し、示談や支払の約束は保険会社へ相談してから行います。

陸屋根に防水材を施工する作業
陸屋根に防水材を施工する作業(イメージ)Photo: Ömer Haktan Bulut / Unsplash

部屋が使えないときの家賃と入居者対応

借主の責めによらず部屋の一部を使用・収益できなくなった場合、民法はその部分に応じた賃料の減額を定めています。減額の具体的な範囲と期間は、使用不能の事実を確認して整理します。

寝室が使えないのか、水回りが使えないのか、全体に危険があるのかで支障は違います。水が止まった日だけでなく、乾燥やカビの処置が終わり、通常使用に戻った日も記録します。転居やホテル費用を求められた場合は、必要性と事故との関係を確認します。

損失の大きさを考える参考として、近隣住戸の募集賃料を示します。減額率を決める統計や、保険金の算定基準ではありません。

駅件数募集賃料中央値(月額)
赤羽299.8万円
高田馬場3113.8万円
練馬3110.4万円

出典:Urbalytics rent_stats、東京都・MANSION(アパート住戸を含む)・25〜40㎡・2026年9月1〜30日の募集掲載、集計日2026年10月9日。重複・所定の異常値を除外。成約賃料ではなく、築年・駅徒歩・設備はそろえていません。

赤羽9.8万円・高田馬場13.8万円・練馬10.4万円。29・31・31件。
東京3駅・25〜40㎡の募集賃料(出典:Urbalytics MANSION 25–40㎡ / 2026-09-01–09-30 / 2026-10-09)

高田馬場の月額13.8万円を例に、仮に月30日、使用不能10日、減額割合20%という条件で計算すると、減額は9,200円です(138,000円×10/30×0.20)。日数と割合は説明用の仮定で、法定の固定率ではありません。実際は契約賃料と確認した使用状況を使います。

修理の訪問予定、使用できる場所、次の連絡時刻を入居者へ具体的に伝えます。家賃と家財補償を一つの金額で急いでまとめず、根拠を分けて記録すると、復旧後の精算がしやすくなります。

復旧後に残す記録と再発防止

復旧の完了は、表面が乾いたことだけで判断しません。漏水原因が解消したか、隠れた部分の乾燥やカビ対応が必要かを業者に確認します。

原因報告、応急工事、本復旧の見積・請求書を分けて保存します。家財の申告は写真と購入時期などを付け、建物工事と混ぜないようにします。保険会社が求める資料と未回答の事項を記録し、支払確定前の金額を収入として当て込まないようにします。

屋根・外壁・給排水の点検と更新は、国土交通省の計画修繕ガイドブックやアパートの大規模修繕で全体計画を確認できます。事故の修理を予定修繕へつなげることで、同じ部位への応急対応が続く状態を避けます。

管理会社とオーナーの担当範囲も確認します。夜間の連絡先、業者への発注権限、緊急工事の費用承認、保険会社への窓口を定めます。退去時の費用区分は原状回復の貸主・借主負担と区別して扱います。

よくある質問

Q. 雨漏りは火災保険で直せますか?

原因と契約内容によります。経年劣化の防水更新などは対象外になり得るため、原因部位の修理と結果として生じた損害を分けて確認します。

Q. 入居者の家財はオーナーが全部払いますか?

一律には決まりません。原因、法律上の責任、損害との関係を調べ、家財保険と賠償保険の範囲を確認します。

Q. 保険会社の調査まで修理を待つべきですか?

安全確保と被害防止の応急対応は先に進めます。保険会社へ連絡し、撤去前の写真や工事記録を残します。

Q. 家賃は何割減額しますか?

固定の割合はありません。使用できない部分、期間、実際の生活への支障を確認し、契約賃料で計算します。

まとめ

  • 安全確保、止水、記録、原因調査の順で対応する。
  • 修繕義務と賠償責任、建物保険と第三者賠償を分ける。
  • 家賃減額の範囲と期間は、使用不能の事実から確認する。
  • 原因報告と修繕記録を残し、設備更新と管理体制へ反映する。

資料:民法、国土交通省、日本損害保険協会、三井住友海上の公表資料、Urbalytics。確認日2026年10月9日。補償は契約ごとの約款によります。

アイキャッチ画像(イメージ):Photo: Ömer Haktan Bulut / Unsplash

この記事について

執筆
栗原 瑞樹(PM事業)保有資格:宅地建物取引士・FP2級・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士

賃貸管理と分譲マンション管理の実務経験をもとに、オーナー対応から修繕・契約管理までを担当する。 日本管財住宅管理などで、プロパティマネジメントに10年以上従事。オーナー・入居者対応、賃貸借契約の管理、修繕対応に加え、分譲マンションの理事会・総会運営も経験してきた。宅地建物取引士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士などの資格を持つ。 管理業務では、日々の対応と建物を長く保有するための準備を両立させることを重視している。コラムでは、管理会社変更時の引継ぎ、原状回復の費用負担、大規模修繕や設備更新を具体的に解説。オーナーが費用・必要性・実施時期を整理して判断できるよう、管理の実務をわかりやすく伝える。

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TLL合同会社宅地建物取引業 東京都知事(1)第108202号住宅宿泊管理業 国土交通大臣(01)第F03424号

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