桜並木の奥に建つ築年数の経った集合住宅(イメージ)

アパートの大規模修繕はいつ・いくら?外壁・屋上防水・鉄部・給排水の周期と費用、積立と売却価格への影響

栗原 瑞樹(宅地建物取引士)PM事業

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築10年を過ぎたあたりから、外壁のひび割れや鉄部のさび、屋上の防水の劣化が目に見えてきます。「いつ、何を、いくらで直せばいいのか」が分からないまま先送りすると、雨漏りなどの不具合が出てから慌てて工事をすることになり、費用も空室も増えがちです。

この記事では、アパート(一棟の賃貸住宅)の大規模修繕について、外壁・屋上防水・鉄部塗装・給排水などの工事ごとの周期と費用の目安、修繕費の積み立て方、そして修繕が賃料と売却価格にどう影響するかを、国土交通省の資料とTLLの見積実績をもとに整理します。

この記事のポイント

  • 国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」では、外壁塗装は11〜18年目、鉄部塗装は4〜10年目、給排水管の取替は30年目が修繕の目安とされています。
  • 同ガイドブックの試算では、30年間の修繕費は1戸あたり約174万〜225万円で、月あたりに直すと1戸約4,800〜6,300円の積み立てに相当します(構造・間取りで異なる)。
  • 東京5駅の一棟収益物件の表面利回り中央値は4.3〜5.2%で、修繕の遅れで年間賃料が60万円下がると、利回りで割り戻した価格は約1,160万〜1,400万円下がる計算です(2026年10月、Urbalytics 売出データ)。

アパートの大規模修繕とは

アパートの大規模修繕とは、足場を組んで外壁・屋根(屋上)・共用廊下や階段などを一度にまとめて直す工事のことです。おおむね築11〜15年目に1回目、築21〜25年目に2回目が来るのが一般的な目安です。

足場と飛散防止ネットで覆われた改修中の集合住宅
足場と飛散防止ネットで覆われた改修中の集合住宅(イメージ)Photo: Leo Dalitte / Unsplash

分譲マンションのように管理組合が修繕積立金を集める仕組みはなく、アパートではオーナー様ご自身が時期を決め、費用を用意します。そのため、計画がないまま築年数を重ねると、資金が足りずに工事を見送り、劣化が進んでさらに費用がかさむ、という流れになりやすくなります。国土交通省のガイドブックも、修繕をしていない賃貸人の多くが「資金的余裕がない」ことを理由に挙げていると紹介しています。

工事項目ごとの修繕周期と費用の目安

修繕の時期は工事項目によって異なり、鉄部塗装は5年前後、外壁と屋上防水は12〜15年前後、給排水管の取替は30年前後が目安です。主な工事の周期と、TLLが受け取った見積の単価をまとめました。

工事項目修繕周期の目安(賃貸住宅)参考:分譲マンションの周期費用の目安(税抜)
足場(外壁・防水工事と共通)外壁工事と同時12〜15年くさび式 800〜1,150円/㎡+飛散防止メッシュ 100〜250円/㎡
外壁塗装11〜18年目12〜15年(塗替)下塗り 600〜1,000円/㎡+中・上塗り 1,200〜1,700円/㎡
シーリング打替外壁工事と同時12〜15年変成シリコン 800〜1,500円/m
屋根・屋上防水塗装・補修 11〜15年目/防水・葺替 21〜25年目補修・修繕 12〜15年/撤去・新設 24〜30年ウレタン防水(密着・平場)4,500〜5,800円/㎡、トップコート 2,000〜2,700円/㎡
鉄部塗装(階段・手すり・扉)4〜10年目5〜7年手すり・樋など 1,000〜1,100円/m、鉄扉 10,500〜12,000円/箇所
階段・廊下(塗装・防水)11〜18年目12〜15年(床防水)長尺シート 4,800〜6,000円/㎡
給排水管高圧洗浄 5年目から定期的に/取替 30年目更生 19〜23年/取替 30〜40年排水管の高圧洗浄 1戸あたり5,500円(ガイドブックの試算例)
給湯器・エアコン交換 11〜15年目—交換 1戸あたり各110,000円(ガイドブックの試算例)

出典:修繕周期(賃貸住宅)と給排水・給湯器・エアコンの金額は国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」(RC造20戸・1LDK〜2DKの試算例)。分譲マンションの周期は国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改定)の修繕周期の例。その他の単価はTLLが2021〜2026年に受け取った工事見積(東京23区・多摩・埼玉南部、134件)の単価レンジで、2026年9月時点の集計。仕様・数量・時期で変わるため、個別の物件では見積で確認してください。確認日:2026年10月2日。

賃貸住宅の修繕周期の目安。鉄部塗装4〜10年目、外壁塗装11〜18年目、屋根の塗装・補修11〜15年目、防水・葺替21〜25年目、階段・廊下11〜18年目、給湯器・エアコン交換11〜15年目、給排水管取替30年目
工事項目ごとの修繕周期の目安(賃貸住宅)(出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」)
㎡あたりの工事単価の下限と上限。くさび式足場800〜1,150円、外壁下塗り600〜1,000円、中・上塗り1,200〜1,700円、トップコート2,000〜2,700円、ウレタン防水4,500〜5,800円、長尺シート4,800〜6,000円
㎡あたり工事単価の目安(税抜)(出典:TLL受領の工事見積134件(東京23区・多摩・埼玉南部、2021〜2026年))

一棟あたりの総額では、3〜5階建て・10戸前後の建物で、外壁塗装・シーリング・屋上防水・鉄部塗装をまとめて行った工事が、TLLの見積実績で税込250万〜500万円の範囲に収まっています。足場は一度組むと数十万円単位の費用がかかるため、外壁・シーリング・防水・鉄部は同じ足場でまとめて行うのが基本です。

見積を比べるときの注意点

  • 数量をそろえる:TLLが受け取った見積でも、同じ建物で足場の面積が業者によって約1.8倍違った例がありました。総額ではなく、足場・塗装面積・シーリングの長さを並べて比べます。
  • 「一式」の多い見積は内訳を求める:工事の大半が「一式」だと、単価が高いのか数量が多いのか判断できません。
  • 安すぎる見積は範囲を確認する:極端に安い見積は、工事範囲が狭い(一部の面だけ、防水を含まないなど)ことがあります。
陸屋根の屋上に防水材を吹き付ける作業
陸屋根の屋上に防水材を吹き付ける作業(イメージ)Photo: Ömer Haktan Bulut / Unsplash

一棟でいくらかかるか:30年間の修繕費のイメージ

国土交通省のガイドブックは、構造と間取り別に30年間の修繕費のイメージを示しています。1回目の大規模修繕(11〜15年目)だけでなく、2回目(21〜25年目)は屋根・防水の改修や浴室設備の交換が重なり、1回目より高くなる点に注意が必要です。

建物11〜15年目(棟)21〜25年目(棟)30年間の合計(棟/1戸あたり)月あたりの積立目安(1戸)
RC造20戸(1LDK〜2DK)約1,090万円約2,320万円約4,490万円/約225万円約6,300円
RC造10戸(1K)約460万円約900万円約1,770万円/約177万円約4,900円
木造10戸(1LDK〜2DK)約640万円約980万円約2,160万円/約216万円約6,000円
木造10戸(1K)約520万円約800万円約1,740万円/約174万円約4,800円

出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」の修繕時期・費用のイメージ。「月あたりの積立目安」は1戸あたりの30年合計を360か月で割った単純計算(TLL試算)。ガイドブックの金額は作成時点の想定で、その後の資材費・人件費の上昇は反映されていません。確認日:2026年10月2日。

棟あたりの修繕費。RC造20戸は11〜15年目約1,090万円・21〜25年目約2,320万円、RC造10戸(1K)は約460万円・約900万円、木造10戸は約640万円・約980万円、木造10戸(1K)は約520万円・約800万円
1回目と2回目の大規模修繕費(棟あたり)(出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」修繕時期・費用のイメージ)

修繕積立の考え方

アパートの修繕費は、毎月の賃料収入から一定額を取り分けておき、修繕のたびに取り崩すのが基本です。ガイドブックでは、RC造20戸の例で25年目までの修繕費をまかなうには、毎月1戸あたり約7,000円の積み立てが必要という試算が示されています。

積立額を決めるときは、次の順で考えると無理がありません。

  1. 建物の長期修繕計画を作る:上の表の周期を自分の建物に当てはめ、何年目にどの工事が来るかを一覧にします。新築時の施工会社や管理会社に、過去の修繕履歴とあわせて確認します。
  2. 次の大規模修繕までの必要額を割り戻す:たとえば5年後に500万円の工事が見込まれるなら、年100万円、月約8.3万円を取り分けます。
  3. 点検の結果で見直す:年1回程度の点検で劣化の進み方を確認し、前倒しや先送りに合わせて積立額を調整します。
  4. 不足しそうなら早めに資金計画を立てる:ガイドブックも、積立が足りない場合は金融機関の融資を早めに相談するよう勧めています。
修繕積立額を決める4つのステップ:長期修繕計画を作る、次の大規模修繕までの必要額を割り戻す、点検の結果で見直す、不足しそうなら早めに資金計画を立てる
修繕積立額を決める4つのステップ(出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」)

税金の面では、アパートオーナーが自分で積み立てているお金は、その時点では経費になりません。経費になるのは実際に工事をしたときで、原状回復のための工事は修繕費、建物の価値を高める工事は資本的支出(減価償却)として扱われます。判定の基準は国税庁のタックスアンサー「修繕費とならないものの判定」(番号1379)にまとめられており、金額の大きな工事は税理士に事前に確認しておくと安心です。

管理会社に任せている場合は、長期修繕計画の作成や相見積もりの手配まで対応してもらえるかを確認しておくと、修繕の時期を逃しにくくなります。委託するかどうかで迷っている方は「自主管理と管理委託どっちがいい?」もあわせてご覧ください。

修繕と賃料・売却価格の関係

修繕は単なる出費ではなく、賃料と売却価格を守るための投資です。外観や共用部の劣化が進むと周辺の物件に比べて選ばれにくくなり、空室や賃料の値下げにつながります。国土交通省が2016年3月にまとめた調査では、管理会社が挙げた計画修繕の効果として「住宅の性能が維持できる」が67.2%、「高い入居率を確保できる」「周辺物件に対し競争力が高まる」がそれぞれ52.7%、「家賃水準を維持できる」が47.3%でした。

収益物件の価格は、おおむね「年間賃料 ÷ 利回り」で決まります。そのため、修繕の遅れで賃料が下がると、利回り5%なら下がった賃料の約20倍の金額が価格から失われる計算です。東京5駅の一棟収益物件の利回りで試算しました。

駅集計件数表面利回り(中央値)年間賃料が60万円下がった場合の価格への影響(試算)
錦糸町36件4.30%約1,400万円
赤羽34件4.80%約1,250万円
池袋75件4.81%約1,250万円
蒲田52件5.01%約1,200万円
北千住53件5.18%約1,160万円

出典:Urbalytics 一棟収益物件の売出データ(東京都内、各駅を最寄りとする物件)。2025年10月2日〜2026年10月2日に掲載・価格変更のあった売出物件、複数サイトの重複掲載を除く(表面利回り1%未満・25%超は除外)。表面利回り=年間賃料÷売出価格で、成約価格ではありません。「価格への影響」は60万円÷表面利回り中央値で試算(10戸で1戸あたり月5,000円の賃料下落を想定)。集計日:2026年10月2日。

年間賃料が60万円下がった場合の価格への影響の試算。錦糸町約1,400万円、赤羽約1,250万円、池袋約1,250万円、蒲田約1,200万円、北千住約1,160万円
年間賃料60万円減の価格への影響(試算)(出典:Urbalytics 一棟売出データ(2025年10月2日〜2026年10月2日、重複掲載を除く)、集計日2026年10月2日)

10戸のアパートで1戸あたり月5,000円賃料が下がると、年間60万円の減収です。利回り5%前後で評価される東京の駅では、価格にして1,000万円を超える差になります。上の表で見た一棟あたりの修繕費(10戸前後で数百万円)と比べると、適切な時期の修繕が資産価値を守る効果は小さくありません。

売却の場面でも、修繕履歴は評価に影響します。買主は近いうちに必要になる修繕費を見込んで価格を考えるため、外壁や防水の工事時期が過ぎている物件は、その分を差し引いて検討されやすくなります。反対に、工事の記録(図面・写真・保証書)がそろっている物件は、建物の状態を説明しやすくなります。査定の仕組みは「一棟アパートの査定額はどう決まる?」で解説しています。

さびが出た階段の鉄製手すり
さびが出た階段の鉄製手すり(イメージ)Photo: Najm Shihabi / Unsplash

なお、修繕の時期は空室対策や収入の見直しを一緒に進める好機でもあります。外装を新しくするタイミングで募集条件を見直す方法は「アパートの空室対策」、あわせて検討したい家賃以外の収入源は「アパートの付帯収入を増やす方法」を参考にしてください。

よくある質問

Q. アパートの大規模修繕は築何年目に行うのが目安ですか?

国土交通省のガイドブックでは外壁塗装を11〜18年目、屋根の塗装・補修を11〜15年目としており、1回目の大規模修繕は築11〜15年目ごろが一つの目安です。2回目は、防水や屋根の葺き替えが重なる21〜25年目ごろです。

Q. 10戸程度のアパートの大規模修繕はいくらかかりますか?

TLLの見積実績では、3〜5階建て・10戸前後の建物で外壁塗装・シーリング・屋上防水・鉄部塗装をまとめた工事が税込250万〜500万円の範囲でした。国土交通省のガイドブックでは、RC造10戸(1K)の11〜15年目の修繕費を棟あたり約460万円と試算しています。

Q. 修繕費は毎月いくら積み立てればよいですか?

国土交通省のガイドブックの30年間の試算を月割りにすると、1戸あたり月約4,800〜6,300円です。実際には、自分の建物で次の大規模修繕がいつ・いくら必要かを見積もり、そこから逆算して決めます。

Q. 修繕を先送りするとどうなりますか?

劣化が進むと部分的な補修では済まなくなり、工事費が増えやすくなります。外観の劣化で入居者に選ばれにくくなれば賃料も下がり、利回り5%前後で評価される物件では年60万円の減収が1,000万円を超える価格差になる計算です。

まとめ

  • 修繕周期の目安は、鉄部塗装4〜10年目、外壁塗装11〜18年目、屋根・屋上の防水・葺替21〜25年目、給排水管の取替30年目です(国土交通省ガイドブック)。
  • 3〜5階建て・10戸前後の大規模修繕は、TLLの見積実績で税込250万〜500万円。外壁・シーリング・防水・鉄部は同じ足場でまとめて行います。
  • 30年間の修繕費は1戸あたり約174万〜225万円で、月1戸約4,800〜6,300円の積み立てに相当します。2回目の大規模修繕は1回目より高くなります。
  • 東京5駅の表面利回り中央値4.3〜5.2%で割り戻すと、年60万円の賃料下落は約1,160万〜1,400万円の価格差になります(2026年10月、Urbalytics)。

TLLの管理代行は、リーシング・入居者対応に加えて、収支モニタリング、賃料是正やコスト削減の提案、月次レポートまでをお受けしています。修繕の時期や見積の内容についてもご相談ください。詳しくは資産管理・運用サービスをご覧ください。

アイキャッチ画像(イメージ):Photo: Perry Merrity II / Unsplash

この記事について

執筆
栗原 瑞樹(PM事業)保有資格:宅地建物取引士・FP2級・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士

プロパティマネジメント分野で10年以上の経験を有する。賃貸管理・分譲マンション管理の両分野において、オーナー対応、入居者対応、契約管理、修繕対応、理事会・総会運営など幅広い業務を担当。

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運営
TLL合同会社宅地建物取引業 東京都知事(1)第108202号住宅宿泊管理業 国土交通大臣(01)第F03424号

記事中のデータは出典と集計時点を明記しています。相場や制度は変わることがあるため、個別の判断は最新情報と専門家へのご相談のうえで行ってください。

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