足場に囲まれた改修中の建物(イメージ)

アパートの外壁塗装はいつ・いくら? 塗料の種類と耐用年数、足場を含む費用の目安と業者選び

栗原 瑞樹(宅地建物取引士)PM事業

約10分で読めます

アパートの外壁は、築10年を過ぎると色あせや細かなひびが目立ち始めます。塗り替えには足場が必要で、一度に数百万円かかる工事になるため、「まだ大丈夫か」「どの塗料を選べばよいか」「見積は妥当か」を判断できないまま先送りしてしまうオーナー様も少なくありません。

この記事では、アパートの外壁塗装に絞って、塗り替えの時期と劣化サインのチェックリスト、塗料の種類ごとの耐用年数と単価、足場を含む費用の内訳、見積の比べ方と業者選びのポイントを、国土交通省の資料とTLLが受け取った工事見積の単価をもとに整理します。屋上防水や給排水を含む修繕計画の全体像は「アパートの大規模修繕はいつ・いくら?」をご覧ください。

この記事のポイント

  • 国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」では、賃貸住宅の外壁塗装の修繕時期の目安を11〜18年目としています。
  • TLLが受け取った工事見積(2021〜2026年、134件)では、シリコン塗料の中・上塗り2回が1㎡あたり1,200〜1,700円、くさび式足場が800〜1,150円(いずれも税抜)でした。
  • 3階建て・10戸前後のアパート(足場480㎡)を標準単価で試算すると、外壁塗装・シーリング・鉄部塗装で税抜約218万円、税込約240万円になり、うち足場が約2割を占めます。

外壁塗装の時期の目安と劣化サイン

アパートの外壁塗装は、築11〜18年目が目安です。国土交通省の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」は、賃貸住宅の外壁塗装の修繕時期をこの範囲としており、実際の時期は塗料の種類や立地(日当たり・海風・幹線道路沿いなど)で前後します。年数だけで決めず、次のような劣化サインを年に1回程度確認すると判断しやすくなります。

  • チョーキング:外壁を手でなでると白い粉が付く。塗膜の樹脂が紫外線で分解され、防水性が落ち始めたサイン
  • ひび割れ:髪の毛ほどの細いひび(ヘアクラック)か、それより幅の広いひびか。幅が広いものや段差のあるものは、雨水が入る前に専門業者に見てもらう
  • 塗膜のふくれ・はがれ:下地との密着が失われている状態で、部分補修では済まないことが多い
  • シーリングの劣化:サッシ周りや外壁材の継ぎ目のゴム状の材料が、ひび割れたり痩せてすき間ができたりしている
  • コケ・カビ・藻:北面や植栽の近くに出やすく、塗膜の防水性が落ちている目安になる
  • 鉄部のさび:外階段・手すり・鉄扉のさびは外壁より早く進むため、外壁と同時に塗り替えるのが効率的
  • 室内の雨染み:天井や窓まわりに染みが出ていれば、時期を待たずに原因を調べる
ひびが入った白い壁の表面
ひびが入った白い壁の表面(イメージ)Photo: Krakograff Textures / Unsplash

同じガイドブックは、修繕をしないまま劣化を放置すると入居率が下がり、家賃収入が減って修繕資金も足りなくなる「負のスパイラル」に陥るおそれがあると指摘しています。外観の印象は内見時の第一印象にも直結するため、塗り替えは空室対策の一つでもあります。

塗料の種類と耐用年数・単価

外壁用の塗料は、主成分の樹脂によって耐久性と価格が変わり、一般に耐用年数が長いものほど単価が上がります。賃貸アパートでは、価格と耐久性のバランスからシリコン系が選ばれることが多く、TLLが受け取った外壁塗装の見積も大半がシリコン系でした。

塗料の種類期待耐用年数の目安TLL受領見積の単価(中・上塗り2回、税抜)特徴
アクリル5〜8年実績なし安価だが塗り替えの間隔が短い
ウレタン8〜10年外壁は実績なし(鉄部・樋など付帯部で使用、1,000〜1,100円/m)密着性が高く、付帯部に使われることが多い
シリコン10〜15年1,200〜1,700円/㎡(ナノテク系の上位品は1,800〜2,400円/㎡)価格と耐久性のバランスがよい
ラジカル制御形12〜15年2,500円/㎡(1件、30㎡の部分補修のため参考値)紫外線による劣化を抑える設計
フッ素15〜20年実績なし耐候性が高く、塗り替え回数を減らせる
無機15〜25年実績なしもっとも高耐久とされるが、価格も高い

出典:期待耐用年数は塗料メーカーの公表値などで一般に用いられる目安で、製品・下地・立地・施工によって変わり、保証年数ではありません。単価はTLLが2021〜2026年に受け取った工事見積(東京23区・多摩・埼玉南部、工事系134件)の明細から集計(2026年9月時点)。実績のない塗料は単価を掲載していません。確認日:2026年10月2日。

外壁用塗料の期待耐用年数の目安。アクリル5〜8年、ウレタン8〜10年、シリコン10〜15年、ラジカル制御形12〜15年、フッ素15〜20年、無機15〜25年
外壁用塗料の期待耐用年数の目安(出典:塗料メーカー公表値などで一般に用いられる目安。保証年数ではありません)

塗料の耐候性を客観的に比べたいときは、製品がJIS K 5658(建築用耐候性上塗り塗料)のどの等級に該当するかを確認する方法があります。この規格は促進耐候性試験の時間で等級を分けており、1級は2,500時間、2級は1,200時間、3級は600時間の試験後に所定の光沢保持率を満たすことが条件です。見積に書かれた商品名から、カタログで等級を確かめておくと比較しやすくなります。

高耐久の塗料は単価が高い一方、次の塗り替えまでの期間が延びれば、そのたびにかかる足場代を減らせます。保有期間が短く、数年以内の売却を考えている場合はシリコン系、長く持つつもりならフッ素系以上も候補、というように出口の時期とあわせて選ぶのが現実的です。

並べられた塗料の缶
並べられた塗料の缶(イメージ)Photo: Ximena Balderas / Unsplash

外壁塗装の費用:足場・下地・塗装・シーリングの内訳

外壁塗装の総額は「足場」「洗浄・下地補修」「塗装(下塗り・中塗り・上塗り)」「シーリング」「付帯部(鉄部など)」「諸経費」の合計です。TLLが受け取った見積の単価は次のとおりです。

工種単位単価の範囲(税抜)標準的な単価
足場(くさび式)㎡800〜1,150円900円
飛散防止メッシュシート㎡100〜250円150円
外壁高圧洗浄㎡100〜420円200円
クラック補修(Uカット+シーリング)m2,300円2,300円
下塗り(微弾性フィラー・シーラー)㎡600〜1,000円700円
中・上塗り2回(シリコン)㎡1,200〜1,700円1,500円
シーリング打替(変成シリコン)m800〜1,500円1,050円
鉄部塗装(手すり・樋など)m1,000〜1,100円1,100円
鉄扉塗装箇所10,500〜12,000円11,000円
諸経費(処分・運搬・養生を含む)小計に対する割合5〜15%8〜12%

出典:TLLが2021〜2026年に受け取った工事見積(東京23区・多摩・埼玉南部、工事系134件・明細3,050行)の単価レンジ。範囲は下位25%〜上位25%、標準は中央値。クラック補修は出処が少ないため1つの値のみ。集計日:2026年9月25日。

この単価で、3階建て・10戸前後のアパートを試算しました。前提は、建物の外周40m・軒高9m、足場面積は業界で使われる概算式「(外周+8m)×(軒高+1m)」で480㎡、塗装面積はその8割の384㎡、シーリング打替300m、鉄部120m・鉄扉10枚、諸経費は小計の10%です。

項目数量金額(税抜)
足場・メッシュシート480㎡50.4万円
高圧洗浄384㎡7.7万円
下塗り384㎡26.9万円
中・上塗り2回(シリコン)384㎡57.6万円
シーリング打替300m31.5万円
鉄部・鉄扉塗装120m・10枚24.2万円
諸経費(10%)—19.8万円
合計—約218万円(税込 約240万円)

出典:上表の標準単価を使ったTLLの試算。実際の金額は建物の形状、ひびの量、塗料のグレード、敷地の広さ(足場の組みやすさ)で変わります。集計日:2026年10月2日。

外壁塗装の費用内訳の試算。中・上塗り57.6万円、足場・メッシュ50.4万円、シーリング打替31.5万円、下塗り26.9万円、鉄部・鉄扉24.2万円、諸経費19.8万円、高圧洗浄7.7万円、合計約218万円(税抜)
外壁塗装の費用内訳(試算・税抜)(出典:TLL受領の工事見積134件(東京23区・多摩・埼玉南部、2021〜2026年)の標準単価で試算)

足場は総額の約2割を占め、工事のたびに必要になります。屋上防水や鉄部の塗り替えを別の年に行うと足場代が二重にかかるため、同じ足場でまとめて行うのが基本です。屋上のウレタン防水を加えると、TLLの見積実績では3〜5階建て・10戸前後の大規模修繕が税込250万〜500万円の範囲に収まっています。塗料を上位グレードに替えた場合の差額は、塗装面積×単価差で見積もれます。たとえば単価が1㎡あたり1,000円上がると、この試算では約38万円の増額です。

見積の比べ方と業者選び

外壁塗装の見積は、総額ではなく「数量」と「単価」を分けて比べるのが基本です。TLLが受け取った見積でも、同じ建物で足場の面積が業者によって約1.8倍違った例がありました。比べるときは次の点を確認します。

  • 数量の根拠:足場面積が概算式より2割以上多い場合や、塗装面積・シーリング長さが書かれていない場合は根拠を聞く
  • 「一式」の割合:明細の金額のうち「一式」計上が半分を超えると比較できないため、数量・単価入りの内訳を求める
  • 塗料の商品名と塗り回数:「シリコン塗装」だけでなく、メーカー・商品名と下塗り・中塗り・上塗りの回数が書かれているか
  • 範囲の漏れ:極端に安い見積は、一部の面だけ、付帯部やシーリングを含まない、といった範囲の違いを疑う
  • 保証:保証書が発行されるか、保証年数と対象(はがれ・ふくれなど)、定期点検の有無
  • 許可と保険:請負金額が1件500万円(税込)以上の塗装工事は建設業許可(塗装工事業)が必要。あわせて工事中の損害に備える保険への加入も確認する

相見積は3社程度に、同じ仕様書・同じ数量条件で依頼すると、単価の違いがそのまま比べられます。業者選びから完了までの流れは次のとおりです。

外壁塗装の業者選びと工事の流れ:劣化診断、仕様と範囲を決める、3社程度に見積依頼、数量と単価を比較、契約と事前告知、施工と中間確認、完了検査と保証書
外壁塗装の業者選びと工事の流れ(出典:TLLの修繕発注の実務をもとに作成)

工事中は、足場とメッシュシートで日当たりが悪くなり、塗装の工程ではベランダに洗濯物を干せない日が出ます。着工前の早い段階で、工期・作業時間・洗濯物やエアコン室外機の注意点を入居者へ書面で知らせ、近隣にも挨拶しておくと苦情を防ぎやすくなります。完了後は、工程ごとの写真・保証書・使用塗料の記録を保管しておくと、次の修繕計画や売却時の説明に使えます。

税金の面では、建物の現状を維持するための塗り替えは一般に修繕費として、その年の経費になります。一方、建物の価値や耐久性を高める工事は資本的支出として減価償却の対象になる場合があります。判定の基準は国税庁のタックスアンサー「修繕費とならないものの判定」(No.1379)にまとめられているので、金額が大きい工事は事前に税理士へ確認しておくと安心です。

よくある質問

Q. アパートの外壁塗装は築何年で行うのが目安ですか?

国土交通省の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」では、賃貸住宅の外壁塗装を11〜18年目としています。チョーキングやひび割れ、シーリングの劣化が出ていれば、年数にかかわらず点検を依頼してください。

Q. 10戸程度のアパートの外壁塗装はいくらかかりますか?

TLLの見積単価で3階建て・10戸前後(足場480㎡)を試算すると、外壁塗装・シーリング・鉄部塗装で税込約240万円でした。屋上防水まで含めた大規模修繕は、TLLの実績で税込250万〜500万円の範囲です。

Q. 足場代はいくらですか?

TLLの受領見積では、くさび式足場が1㎡あたり800〜1,150円、飛散防止メッシュが100〜250円(税抜)でした。足場480㎡の建物なら約50万円で、総額の2割前後を占めます。

Q. シリコンとフッ素はどちらを選ぶべきですか?

一般にシリコンは10〜15年、フッ素は15〜20年が耐用年数の目安とされます。保有期間が短ければシリコン、長く持つなら塗り替え回数と足場代を減らせるフッ素以上も候補です。

まとめ

  • 外壁塗装の目安は築11〜18年目(国土交通省ガイドブック)。チョーキング・ひび割れ・シーリングの劣化・鉄部のさびを年1回確認します。
  • 塗料の期待耐用年数は、シリコン10〜15年、フッ素15〜20年、無機15〜25年が一般的な目安です。TLLの見積ではシリコンの中・上塗り2回が1㎡1,200〜1,700円(税抜)でした。
  • 3階建て・10戸前後の試算は税込約240万円で、足場が約2割。屋上防水や鉄部と同じ足場でまとめると効率的です。
  • 見積は数量と単価を分け、商品名・塗り回数・範囲・保証を3社程度で比べます。

TLLの管理代行では、建物の点検や修繕の見積比較、工事中の入居者への案内まで、オーナー様の代わりに進めることができます。見積が妥当かどうかの確認だけでもご相談ください。詳しくは資産管理・運用サービスをご覧ください。

アイキャッチ画像(イメージ):Photo: Paul Becker / Unsplash

この記事について

執筆
栗原 瑞樹(PM事業)保有資格:宅地建物取引士・FP2級・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士

賃貸管理と分譲マンション管理の実務経験をもとに、オーナー対応から修繕・契約管理までを担当する。 日本管財住宅管理などで、プロパティマネジメントに10年以上従事。オーナー・入居者対応、賃貸借契約の管理、修繕対応に加え、分譲マンションの理事会・総会運営も経験してきた。宅地建物取引士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士などの資格を持つ。 管理業務では、日々の対応と建物を長く保有するための準備を両立させることを重視している。コラムでは、管理会社変更時の引継ぎ、原状回復の費用負担、大規模修繕や設備更新を具体的に解説。オーナーが費用・必要性・実施時期を整理して判断できるよう、管理の実務をわかりやすく伝える。

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運営
TLL合同会社宅地建物取引業 東京都知事(1)第108202号住宅宿泊管理業 国土交通大臣(01)第F03424号

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