
管理会社を変更する方法とタイミング|解約予告・違約金の確認から引き継ぎ、入居者への通知まで
栗原 瑞樹(宅地建物取引士)PM事業
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「空室がなかなか埋まらない」「報告が遅く、何が起きているのか分からない」。管理会社に不満があっても、変更の手続きが面倒そうで先延ばしにしているオーナー様は少なくありません。実際には、契約書の確認と引き継ぎの段取りを押さえれば、入居者に大きな負担をかけずに切り替えることができます。
この記事では、管理会社の変更を考えるサイン、管理委託契約で確認すべき解約予告期間と違約金、敷金・入居者情報・鍵・滞納の引き継ぎ手順、入居者への通知、変更までのスケジュールを順に整理します。
この記事のポイント
- 国土交通省の「賃貸住宅標準管理受託契約書」では、解約予告の期間は「○か月前」と空欄で、当事者が決める形になっています。まずご自身の契約書の解約条項と、予告に代わる支払いの定めを確認します。
- 東京5駅の15〜30㎡住戸の平均募集賃料は約8.8万〜11.3万円で、10室のアパートなら管理料率1%の差は年10.6万〜13.5万円にあたります(2026年10月、Urbalytics 賃貸募集データ)。
- 料率1%の差は、1室の空室がおよそ1.2か月長引くだけで相殺されます。管理会社は料率だけでなく、空室を埋める力と引き継ぎの丁寧さで選びます。
管理会社の変更を考えるサイン
管理会社の変更を考えるべきなのは、空室・報告・お金の流れのどれかで、改善を求めても状況が変わらないときです。単発のミスではなく、同じ問題が繰り返されているかで判断します。
- 空室が長引いている:退去から次の契約まで時間がかかり、賃料や募集条件の見直しについて具体的な提案がない。
- 報告が少ない・遅い:入出金の明細が届くだけで、問い合わせ件数や内見数など募集の状況が分からない。
- 入居者対応が遅い:設備故障やクレームへの対応が遅れ、入居者から直接オーナーに連絡が来る。
- 修繕の見積に根拠がない:工事が「一式」でしか示されず、相見積もりの提案もない。
- 送金や精算が分かりにくい:家賃の送金日がずれる、敷金や預り金の扱いが説明されない。
- 収益改善の提案がない:駐車場や自販機など家賃以外の付帯収入や、コスト削減の話が出てこない。
そもそも委託を続けるか自主管理に戻すかで迷っている場合は、「自主管理と管理委託どっちがいい?」で費用と手間を比べてから判断すると整理しやすくなります。
変更の前に管理委託契約で確認すること
最初にやることは、現在の管理委託契約書を読み、解約予告期間・違約金・契約期間の3点を確認することです。ここを確認しないまま新しい管理会社と契約すると、旧契約と新契約の管理報酬が重なる期間が生まれます。
解約予告期間
国土交通省の「賃貸住宅標準管理受託契約書」第21条は、オーナーと管理会社のどちらからでも「少なくとも○か月前に文書により」解約を申し入れることで契約を終了できる、としています。期間は空欄で、個々の契約で定めます。ご自身の契約書に書かれた月数から逆算して変更日を決めます。申入れは、後で日付を証明できる方法(郵送の記録が残る書面など)で行うと、後で揉めにくくなります。
違約金・予告に代わる支払い
同じ第21条の第2項では、「○か月分の管理報酬相当額」を支払えば、予告期間を待たずに随時解約できる形も示されています。急いで切り替えたい場合は、この条項があるか、何か月分かを確認します。これとは別に、契約期間中の解約に違約金を定めている契約もあるため、特約欄まで目を通します。
契約期間と更新
自動更新の契約では、更新日の前に申し入れる必要があるか、更新後も予告すればいつでも解約できるかを確認します。また、管理会社が物件を借り上げる「サブリース(特定賃貸借契約)」は管理委託とは別の契約で、オーナーからの解約には借地借家法上の正当事由が求められることがあります。サブリースから管理委託への切り替えを考えている場合は、手続きを別に確認してください。
新しい管理会社から受ける説明
賃貸住宅管理業法では、管理会社は契約前に重要事項を書面で説明し(第13条)、契約締結時に書面を交付する(第14条)ことが義務づけられています。家賃や敷金を自社の財産と分けて管理すること(第16条)、オーナーへ定期的に報告すること(第20条)も定められています。管理戸数200戸以上の管理会社には国土交通大臣への登録が必要なので、新しい管理会社の登録番号もあわせて確認します。
空室と料率で見る、管理会社変更の損得
管理会社を比べるときに料率だけを見ると判断を誤ります。料率の差より、空室期間の差のほうが金額は大きくなりやすいからです。東京23区の5駅で、単身向け(15〜30㎡)住戸の募集賃料をUrbalyticsで集計しました。
| 駅 | 集計件数 | 平均募集賃料(月額) | 平均専有面積 | 10室で管理料率1%差の年額 |
|---|---|---|---|---|
| 赤羽 | 254件 | 約8.8万円 | 23.1㎡ | 約10.6万円 |
| 北千住 | 380件 | 約9.6万円 | 22.7㎡ | 約11.5万円 |
| 池袋 | 500件 | 約10.2万円 | 22.8㎡ | 約12.2万円 |
| 蒲田 | 500件 | 約10.3万円 | 23.1㎡ | 約12.4万円 |
| 錦糸町 | 500件 | 約11.3万円 | 24.6㎡ | 約13.5万円 |
出典:Urbalytics 賃貸募集データ(東京都内、各駅を最寄りとする専有面積15〜30㎡の住戸、主に2026年1〜9月掲載分)。池袋・蒲田・錦糸町は集計上限の500件で打ち切り。募集賃料であり成約賃料ではありません。「料率1%差の年額」は平均募集賃料×10室×12か月×1%で試算。集計日:2026年10月2日。

10室のアパートで料率が1%違うと、年間の差は10万〜13万円台です。一方、1室が1か月空くだけで8.8万〜11.3万円の賃料が入りません。計算上、料率1%の差は1室の空室がおよそ1.2か月長引けば相殺されます。料率を比べるときは、空室が出てから次の入居までの日数の実績もあわせて聞くことをおすすめします。賃料や募集条件の見直し方は「アパートの空室対策」で解説しています。
また、引き継ぎの前後に募集が止まると、それ自体が空室損失になります。変更日は退去や募集の予定が少ない時期を選び、空室がある場合は新しい管理会社が初日から募集できるよう、写真や募集図面の引き継ぎも依頼しておきます。
引き継ぎの手順:敷金・入居者情報・鍵・滞納
引き継ぎで大切なのは、旧管理会社から「書類」「お金」「鍵」「滞納の状況」の4つを、日付を決めて漏れなく受け取ることです。標準管理受託契約書の第22条も、契約終了時に管理会社が書類と保管している金銭を引き渡し、家賃等の滞納状況を報告することを定めています。
- 入居者情報と契約書類:賃貸借契約書・重要事項説明書の写し、入居申込書、更新履歴、連絡先、駐車場・駐輪場の契約。個人情報を含むため、受け渡しの方法と範囲を新旧の管理会社と事前に決めます。
- 敷金と預り金:標準管理受託契約書の第7条は、管理会社が入居者から受け取った敷金等をオーナーに引き渡す形を想定しています。敷金がすでにオーナー口座にあるのか、管理会社が預かっているのかを部屋ごとに一覧で確認し、預かり分は精算書とともに引き渡してもらいます。
- 鍵:各住戸の控え鍵、共用部・メーターボックス・ポスト・倉庫の鍵を、本数を記録した受領書と引き換えに受け取ります。標準管理受託契約書の第12条では、鍵の管理はオーナーが行い、管理会社は入退去時などに一時的に預かる位置づけです。
- 滞納の状況:変更日時点で滞納している部屋、金額、督促の経過、保証会社への報告状況を書面でもらいます。変更日より前の分の督促をどちらが担当するかも決めておきます。
- 建物・設備の記録:修繕履歴、法定点検の報告書、設備業者・清掃業者の連絡先と契約内容、火災保険の証券。
家賃保証会社に加入している部屋は、保証契約の窓口が旧管理会社になっていることがあります。保証が継続されるか、報告先の変更手続きが必要かを保証会社に確認します。保証会社の仕組みは「家賃保証会社とは」で解説しています。
入居者への通知と家賃振込先の切り替え
管理会社を変えても、オーナーと入居者の賃貸借契約はそのまま続くため、入居者の同意は通常必要ありません。ただし通知は欠かせません。標準管理受託契約書の第23条は、管理業務が終了したとき、オーナーと管理会社が遅滞なく入居者に通知することを定めています。
通知文には次の内容を入れます。
- 管理会社が変わる日と、新しい管理会社の名称・連絡先(緊急連絡先を含む)
- 家賃の新しい振込先と、切り替わる月(「○月分の家賃から」と明記)
- 賃貸借契約の内容(賃料・契約期間など)は変わらないこと
- 変更日以降の問い合わせ先が新しい管理会社になること
旧管理会社と新管理会社の連名で出すと、入居者が不審な案内と疑わずに済みます。口座振替や収納代行を使っている場合は切り替えに時間がかかることがあるため、早めに手続きを確認します。変更後の1〜2か月は、旧口座への誤入金がないかを照合し、あった場合の返金方法も旧管理会社と決めておきます。
変更までのスケジュール表
解約予告期間が3か月の契約を例に、変更日までの流れをまとめました。予告期間が違う場合は、2行目の「解約の申入れ」をその月数に合わせて前後させます。
| 時期 | オーナー様がすること | 管理会社側の動き |
|---|---|---|
| 4か月前 | 契約書の解約条項・違約金・更新日を確認。新しい管理会社の候補から提案を受ける | 新管理会社が物件を確認し、管理の進め方と料率を提示 |
| 3か月前 | 旧管理会社へ書面で解約を申し入れる。新管理会社から重要事項説明を受け、契約する | 旧管理会社が引き継ぎの担当者を決める |
| 2か月前 | 引き継ぐ書類・鍵・預り金の一覧を作り、受け渡し日を決める。保証会社・保険・設備業者の名義と窓口を確認 | 新旧の管理会社で引き継ぎ項目をすり合わせる |
| 1か月前 | 入居者への通知文を確定し、配布する。家賃振込先の切り替え月を決める | 新管理会社が募集中の部屋の写真・図面を準備 |
| 変更日 | 書類・鍵・預り金・滞納状況の報告を受領書と引き換えに受け取る | 新管理会社が入居者対応・募集を開始 |
| 変更後1〜2か月 | 家賃の入金と旧口座への誤入金を照合。最終の精算書を確認 | 新管理会社が初回の月次報告を提出 |

よくある質問
Q. 管理会社を変えるのに入居者の同意は必要ですか?
管理委託の場合、賃貸借契約の当事者はオーナーと入居者なので、管理会社の変更に入居者の同意は通常必要ありません。ただし、管理会社が変わることと新しい連絡先・振込先は、遅滞なく通知する必要があります。
Q. 解約予告期間は何か月前が一般的ですか?
国土交通省の賃貸住宅標準管理受託契約書では期間が空欄で、契約ごとに決める形です。ご自身の契約書の解約条項に書かれた月数が基準になるので、まずそこを確認してください。
Q. 敷金は旧管理会社から返してもらう必要がありますか?
敷金がすでにオーナー口座に送金されているか、管理会社が預かっているかで変わります。部屋ごとに一覧で確認し、管理会社が預かっている分は精算書とともに引き渡してもらいます。
Q. 変更の途中で家賃の滞納が起きたらどうなりますか?
変更日時点の滞納状況を旧管理会社から書面で報告してもらい、変更日より前の分の督促をどちらが担当するかを事前に決めておきます。保証会社に加入している部屋は、保証会社への報告先の変更も確認します。
Q. 管理会社の変更にはどのくらい時間がかかりますか?
解約予告期間が3か月の契約なら、契約書の確認と新しい管理会社の選定を含めて4か月ほどを見ておくと余裕があります。予告に代わる支払いの条項があれば、短縮できる場合もあります。
まとめ
- 空室・報告・お金の流れで同じ問題が繰り返されるなら、管理会社の変更を検討する時期です。
- 標準管理受託契約書では解約予告期間は空欄で、契約ごとに決まります。予告期間・違約金・更新日を最初に確認します。
- 東京5駅の単身向け住戸では、10室で料率1%の差は年10.6万〜13.5万円で、1室の空室約1.2か月分に相当します(2026年10月、Urbalytics)。料率より空室を埋める力で選びます。
- 引き継ぎは書類・敷金や預り金・鍵・滞納状況の4つを受領書で受け取り、入居者には連名で振込先の変更を通知します。
TLLの管理代行は、月額賃料収入の3〜5%(税別、物件規模による)で、リーシング・入居者対応・更新や解約の手続き・月次レポートまでをお受けしています。他社の管理会社からの切り替えもご相談ください。詳しくは資産管理・運用サービスをご覧ください。
この記事について
- 執筆
- 栗原 瑞樹(PM事業)保有資格:宅地建物取引士・FP2級・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士
プロパティマネジメント分野で10年以上の経験を有する。賃貸管理・分譲マンション管理の両分野において、オーナー対応、入居者対応、契約管理、修繕対応、理事会・総会運営など幅広い業務を担当。
プロフィールを見る → - 運営
- TLL合同会社宅地建物取引業 東京都知事(1)第108202号住宅宿泊管理業 国土交通大臣(01)第F03424号
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