
サブリース(一括借上げ)契約の注意点|賃料減額・免責期間・中途解約と家賃保証会社との違い
李 瀟(宅地建物取引士)販売・PM事業責任者
約9分で読めます
「空室があっても毎月一定の賃料が入る」という説明でサブリース(一括借上げ)を勧められ、契約を検討しているオーナー様もいらっしゃると思います。一方で、契約から数年後に借上げ賃料の減額を求められた、解約したくても簡単にはできなかった、という声も聞かれます。
この記事では、サブリース契約の仕組みと、賃貸住宅管理業法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)で定められた広告・勧誘のルール、借地借家法32条による賃料減額、免責期間、解約条項の読み方を整理します。入居者の家賃滞納を保証する家賃保証会社とは仕組みがまったく異なるため、その違いも比べます。
この記事のポイント
- サブリースではサブリース業者が借主になるため、契約に「◯年間賃料固定」とあっても、借地借家法32条1項に基づく減額請求はできるとされています(国交省ガイドライン、2023年3月31日改正版)。
- 中野の1K×8戸(1戸10.3万円)で試算すると、年間手取りは管理委託が約872万円、借上げ賃料85%のサブリースが約823万円で、借上げ賃料が10%下がると約741万円になります(Urbalytics 賃料データ、2026年10月)。
- 普通借家として結んだサブリース契約では、オーナーからの更新拒絶・解約には借地借家法28条の正当事由が必要で、業者からの中途解約は契約の定めにより可能な場合があります。
サブリース(一括借上げ)とは:オーナーと業者の関係
サブリースとは、サブリース業者がオーナーから建物を一括で借り上げ、それを入居者に転貸する仕組みです。オーナーと業者の契約は「マスターリース契約(特定賃貸借契約)」、業者と入居者の契約は「転貸借契約」と呼ばれます。
オーナーにとっての主な利点は、入居者の募集や家賃の回収、クレーム対応を業者に任せられ、空室があっても契約で定めた借上げ賃料を受け取れることです。その代わり、借上げ賃料は入居者が払う賃料より低く設定され、オーナーは「借主」である業者を相手に契約することになります。この「業者が借主として法律上守られる立場にある」点が、後で説明する減額や解約の論点につながります。
家賃保証会社との違い
名前が似ていますが、家賃保証会社は入居者の連帯保証人の役割を担う会社で、サブリースとは仕組みが別物です。
| 項目 | サブリース(一括借上げ) | 家賃保証会社 |
|---|---|---|
| オーナーの契約相手 | サブリース業者(借主) | 入居者が保証会社と保証委託契約を結ぶ |
| 何を保証するか | 契約で定めた借上げ賃料の支払い | 入居者の家賃滞納・原状回復費用など |
| 空室のとき | 免責期間を除き借上げ賃料が支払われる | 入居者がいないため保証の対象外 |
| 受け取る賃料水準 | 入居者賃料より低い借上げ賃料 | 入居者が払う賃料そのもの |
| 主な法律 | 賃貸住宅管理業法、借地借家法 | 民法(保証)、各社の約款 |
出典:国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」(2023年3月31日改正)をもとにTLL作成。
賃貸住宅管理業法で禁止されている誇大広告・不当勧誘
サブリースをめぐるトラブルが多発したことから、2020年12月15日に施行された賃貸住宅管理業法では、サブリース業者と勧誘を行う者に対して、誇大広告の禁止(28条)、不当な勧誘等の禁止(29条)、契約締結前の重要事項説明(30条)などが定められました。建設会社や不動産会社が業者と連携して勧誘する場合も、規制の対象になります。
国交省のガイドラインでは、たとえば次のような行為が問題になる例として挙げられています。
- 「家賃保証」「空室保証」と広告しながら、その近くに、定期的な家賃の見直しがあることや借地借家法32条により減額されることがある旨を表示しない
- 「◯年間借り上げ保証」と表示しながら、その期間中でも業者から解約できることを示さない
- 将来の減額リスク、業者からの解約の可能性、オーナー側の修繕・原状回復の費用負担などを伝えず、メリットだけを説明する
- 新築当初の数か月間の借上げ賃料の支払い免責期間があることを説明しない
- 「家賃収入は将来にわたって保証される」など、減額がないかのように断定的に伝える
契約前には、業者から重要事項説明書(特定賃貸借契約重要事項説明書)が書面で交付され、説明を受けることになっています。説明を受けた内容と、広告や営業担当者の話が食い違っていないかを確認することが大切です。
借地借家法32条:「賃料固定」でも減額請求はありうる
サブリース契約では、契約に「10年間は賃料を減額しない」「賃料改定は双方の合意による」といった条項があっても、借地借家法32条1項に基づき、業者から賃料の減額を請求できるとされています。2003年の最高裁判決でも、サブリース契約に同条の適用があることが示されました。
ただし、減額請求ができるのは、①土地・建物の税金などの負担の増減、②土地・建物の価格の変動その他の経済事情の変動、③近くの同種の建物の賃料との比較、により賃料が不相当になった場合です。ガイドラインは、空室の増加や業者の経営悪化だけでは同条による減額請求はできないとしています。また、オーナーは請求をそのまま受け入れなければならないわけではなく、協議で相当な額を決め、まとまらなければ最終的には裁判所の判断になります。

賃料の増減をめぐる争いは、原則としてまず民事調停を申し立てることになっています(民事調停法24条の2)。「近くの同種の建物の賃料」は、同じ駅・同じ広さの募集賃料を調べることで、オーナー自身も確かめられます。なお、定期借家契約として結び「賃料を減額しない」特約を置いた場合は32条が適用されないなど、契約の型によって扱いが異なります。
免責期間・中途解約・更新拒絶の条項で確認すること
借上げ賃料の額だけでなく、次の条項が収支と出口に大きく影響します。
- 免責期間:新築時や入居者の退去後の募集期間について、業者が借上げ賃料を支払わない期間です。期間の長さと、退去のたびに発生するかを確認します。
- 賃料の見直し時期:何年ごとに見直すのか、見直しで合意できなかった場合に契約が終了する条項がないかを確認します。
- 業者からの中途解約:契約期間中でも業者から解約できる定めがあるか、予告期間は何か月かを確認します。
- オーナーからの解約・更新拒絶:普通借家として結んだ場合、オーナーからの更新拒絶や解約には借地借家法28条の正当事由が必要です。「いつでも解約できる」と考えて契約すると、売却や管理方式の変更のときに想定外の制約になります。
- 修繕・原状回復の負担:大規模修繕や設備交換の費用をどちらが負担するか、業者が指定する施工会社で行う条件がないかを確認します。
- 契約終了時の扱い:契約が終わると、オーナーが入居者との賃貸借を引き継ぎ、敷金の返還義務も引き継ぐことが一般的です。
管理委託とサブリースの手取りを試算する
同じ建物で、管理会社に管理を委託する場合とサブリースにする場合の年間手取りを比べました。中野駅徒歩10分以内の1K(20〜30㎡)の募集賃料の中央値10.3万円を使い、1K×8戸のアパートを想定しています。
| 方式 | 前提(仮定) | 年間手取り |
|---|---|---|
| 管理委託 | 稼働率95%、管理委託料5% | 約892万円 |
| 管理委託(AD考慮) | 上記から年2戸の入れ替え時に広告料1か月分 | 約872万円 |
| サブリース | 借上げ賃料=満室想定賃料の85% | 約840万円 |
| サブリース(免責考慮) | 上記から年2戸の退去後に免責1か月 | 約823万円 |
| サブリース(減額後) | 免責考慮後の借上げ賃料が10%減額 | 約741万円 |
出典:Urbalytics 賃料データ(中野駅徒歩10分以内・20〜30㎡、2025年10月2日〜2026年10月2日掲載、重複除外221件、中央値10.3万円)をもとにTLLが試算。借上げ賃料の割合・稼働率・免責期間は仮定で、実際の条件は契約ごとに異なります。修繕費・税金は含みません。集計日:2026年10月2日。

この前提では、管理委託のほうが年50万円前後多く手元に残り、サブリースは「空室リスクを業者に移す代わりに賃料の一部を支払う」仕組みだとわかります。稼働率が大きく下がる立地ではサブリースの安定性が意味を持ちますが、その場合は業者から減額を求められる可能性も高まります。自主管理・管理委託との比較は自主管理と管理委託の比較記事もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. サブリース契約に「30年間家賃保証」と書いてあれば減額されませんか?
契約期間中でも、借地借家法32条1項の要件を満たせば業者から減額を請求できるとされています。広告で「家賃保証」と表示する場合は、減額の可能性があることを近くに表示する必要があります。
Q. サブリース契約をオーナーから解約できますか?
普通借家として結んだ契約では、オーナーからの更新拒絶や解約に借地借家法28条の正当事由が必要で、簡単には認められません。定期借家として結んだ場合は期間満了で終了できますが、途中解約は原則としてできません。
Q. 減額を求められたら応じなければいけませんか?
そのまま受け入れる義務はなく、根拠を確認したうえで協議します。まとまらない場合は原則として調停を経て、最終的には裁判所が相当な賃料を判断します。
Q. 免責期間とは何ですか?
新築時や退去後の募集期間などに、業者が借上げ賃料を支払わない期間のことです。期間と発生する場面を契約書と重要事項説明書で確認してください。
まとめ
- サブリースは業者が借主になる契約で、「賃料固定」の条項があっても借地借家法32条1項に基づく減額請求はありうるとされています。
- 賃貸住宅管理業法(2020年12月15日施行)により、減額リスクや業者からの解約の可能性を示さない広告・勧誘は禁止されています。
- 中野の1K×8戸の試算では、年間手取りは管理委託が約872万円、サブリースが約823万円、借上げ賃料10%減額後は約741万円です。
- 免責期間・見直し時期・中途解約・正当事由・修繕負担の5点は、契約前に書面で確かめておきたい条項です。
TLLの管理代行・アセットマネジメントでは、サブリース契約の条件の確認や、管理委託への切り替えを検討する際の収支比較もご相談いただけます。
アイキャッチ画像(イメージ):Photo: Se. Tsuchiya / Unsplash
この記事について
- 執筆
- 李 瀟(販売・PM事業責任者)保有資格:宅地建物取引士・ビル経営管理士
収益物件の購入・販売と、取得後のプロパティマネジメントをつなぐ実務責任者。 NTTコミュニケーションズで8年以上、大手企業向けDX案件のプロジェクト管理を担当。要件整理から導入・運用まで、多くの関係者が関わる業務を進めてきた経験を、不動産取引と管理業務に活かしている。宅地建物取引士・ビル経営管理士。 TLLでは、収益物件の販売戦略と投資家への提案、契約、決済・引渡しまでの進行を担当し、PM事業を統括する。物件を選ぶ際は、賃料収入に加え、融資期間や修繕費、売却時の築年数まで確認。取得時の判断と、買った後の運営を切り離さない提案を重視している。コラムでは、買い増しや借り換え、海外在住オーナーの管理など、保有期間中の判断も解説している。
プロフィールを見る → - 運営
- TLL合同会社宅地建物取引業 東京都知事(1)第108202号住宅宿泊管理業 国土交通大臣(01)第F03424号
記事中のデータは出典と集計時点を明記しています。相場や制度は変わることがあるため、個別の判断は最新情報と専門家へのご相談のうえで行ってください。











