
一棟投資で規模を拡大する考え方|買い増しの進め方と、金利上昇・借入過多のリスク
1棟目の収益物件が軌道に乗ると、2棟目、3棟目と買い増して賃貸経営の規模を広げたいと考える方が増えます。家賃収入を次の物件の頭金に回し、融資を使って資産を増やしていく進め方は、日本で「大家さん」として規模を拡大してきた多くの投資家がたどってきた道です。
一方で、借入が増えるほど、金利上昇や空室の影響も大きくなります。この記事では、一棟投資で規模を拡大する基本的な進め方と、つまずきやすいポイントを解説します。収益を約束するものではなく、判断の材料として読んでいただければ幸いです。
規模拡大の基本的な考え方
規模拡大は、おおむね次のサイクルを繰り返して進みます。
- 収支の良い物件を、無理のない融資条件で買う
- 入居率を上げ、運営コストを下げて、手元に残るお金(キャッシュフロー)を安定させる
- 家賃収入と本業の収入から、次の物件の頭金と予備資金を貯める
- 既存物件の実績を金融機関に示し、次の融資を受ける
- 市況が良いときは、一部の物件を売却して利益を確定し、次の投資に回す
ポイントは、1棟ごとの収支が自立していることです。家賃収入でローンの返済と運営経費をまかなえていれば、金融機関からも「事業として成り立っている」と評価されやすくなります。
金融機関が次の融資で見るもの
- 既存物件の収支:家賃収入で返済と経費をまかなえているか。確定申告書や物件ごとの収支表で確認されます。
- 借入の総額と返済負担:借入が年収や資産に対して大きくなりすぎていないか。
- 手元資金:借入の規模に見合った現金・預金があるか。
- 決算の内容:法人で持っている場合は、経常利益が黒字か、債務超過になっていないか。
物件が増えてきたら、法人化も選択肢になります。税率の違いや方式は「アパート経営の法人化」で解説しています。
つまずきやすいポイント
借入の増やしすぎ
頭金をほとんど出さずに借入を増やすと、少しの空室や金利上昇で返済が苦しくなります。物件価格に対して融資の割合を上げすぎないこと、購入後も手元に予備資金を残すことが大切です。
金利の上昇
日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後も政策金利を段階的に引き上げています。変動金利で借りている場合、借入が増えるほど金利上昇の影響も大きくなります。
| 借入総額(期間30年・元利均等) | 金利2%の年間返済 | 金利3%の年間返済 | 増加額 |
|---|---|---|---|
| 1億円 | 約444万円 | 約506万円 | 約62万円 |
| 3億円 | 約1,331万円 | 約1,518万円 | 約187万円 |
借入が3億円なら、金利が1%上がるだけで年間の返済は約187万円増えます。購入前に、金利が上がった場合でも収支が回るかを試算しておきます。
空室と修繕
物件が増えるほど、どこかで空室や大規模修繕が発生する可能性も高くなります。修繕の時期を物件ごとに把握し、必要な費用を計画的に積み立てておきます。
物件の質と立地
規模を急ぐあまり、利回りの数字だけで物件を選ぶと、空室が埋まらない、売りたいときに売れないといった問題が出ます。人口や賃貸需要が続くエリアを選ぶことが、長く持つうえでの前提です。
時間と手間をどう配分するか
物件が増えると、入居者対応・修繕の手配・収支管理の手間も増えます。本業を続けながら規模を広げる方の多くは、日々の管理を管理会社に任せ、自分は物件選びと資金計画に時間を使っています。自主管理と委託の比較は「自主管理と管理委託の違い」をご覧ください。
売却も規模拡大の手段になる
保有している物件の中で、価格が上がっている物件や、今後大規模修繕が必要になる物件を売却し、利益や資金を次の物件に回す方法もあります。所有期間が5年を超えると譲渡所得税の税率が下がるため、売却のタイミングは税金も含めて検討します。売却の流れは「収益物件売却の流れ」で解説しています。
まとめ
- 規模拡大は「買う → 運営を安定させる → 資金を貯める → 次を買う」のサイクル。1棟ごとの収支が自立していることが前提。
- 次の融資では、既存物件の収支・借入総額・手元資金・決算内容が見られる。
- 借入の増やしすぎ、金利上昇、空室・修繕、物件の質がつまずきやすいポイント。
- 金利が上がった場合の返済額を、借入総額で試算しておく。
- 管理は任せて物件選びと資金計画に時間を使う。売却も次の投資の資金源になる。
トップ画像:Photo by charlesdeluvio on Unsplash(イメージ)
この記事について
- 執筆
- 李 瀟(販売・PM事業責任者)保有資格:宅地建物取引士・ビル経営管理士
不動産販売およびプロパティマネジメントの実務責任者。NTT コミュニケーションズにて 8 年以上、大手企業向け DX 案件のプロジェクトマネージャーとして、要件定義から納品・運用までの全工程を統括。TLL では収益不動産の販売戦略立案、投資家ソーシング、契約実行、決済・引渡しまでの一連のディールマネジメントを担当し、国内外の投資家・事業者に対して最適な物件提案とスムーズな取引執行を提供。
プロフィールを見る → - 運営
- TLL合同会社宅地建物取引業 東京都知事(1)第108202号住宅宿泊管理業 国土交通大臣(01)第F03424号
記事中のデータは出典と集計時点を明記しています。相場や制度は変わることがあるため、個別の判断は最新情報と専門家へのご相談のうえで行ってください。





